震災への備え、今こそ「総合力」で挑む時
令和7年度、東京消防庁は大規模な総合検閲を実施するという。このニュースは、日頃から私たちの安全を守るため、弛まぬ努力を続けてくれている消防官たちの決意表明とも受け取れる。しかし、単なる訓練の報告として片付けるわけにはいかない。この時期に、このような大規模な検閲が計画されている背景には、私たちが直面する現実、すなわち「首都直下地震」という未曽有の災害への危機感があるからに他ならない。
首都圏に住む者として、いつ襲ってくるか分からない地震への備えは、もはや他人事ではない。消防庁が実施する総合検閲は、個々の部隊の能力向上に留まらず、多様な災害に迅速かつ的確に対応するための「連携」と「総合力」を試す場である。過去の震災や大規模災害の教訓から、個々の卓越した能力だけでは限界があることが明らかになっている。むしろ、各部署、各隊、さらには地域住民や関係機関とのシームレスな連携こそが、被害を最小限に抑え、人命救助を成功させる鍵となる。
特に、この検閲が「大宮分団」を中心に行われるという点に注目したい。地域に根差した消防団の存在は、非常時における地域コミュニティの核となる。彼らの地域特性を熟知した活動は、専門的な消防部隊が迅速に到達できない状況下で、初期対応を担う上で極めて重要である。大宮分団が主導する総合検閲は、まさに地域と消防組織の「一体化」を追求する試みであり、その成果は全国の消防団にとって貴重な指針となるだろう。
しかし、我々業界新聞としては、この検閲を単なる「見せる」ためのイベントで終わらせてはならないと警鐘を鳴らしたい。検閲で示された成果を、いかに日常的な訓練や実務に落とし込み、継続的に維持・発展させていくか。そして、それらの活動を支えるための予算や人材の確保、最新技術の導入といった、より実質的な支援策が今後も必要不可欠である。
また、消防庁だけでなく、私たち一般企業も、この機会に自社のBCP（事業継続計画）を見直し、従業員の防災意識を高めるべきである。地震発生時、企業活動が停止すれば、経済活動への影響は計り知れない。地域社会の一員として、事業継続能力を高めることは、社会全体のレジリエンス向上に繋がる。
令和7年度の総合検閲は、東京消防庁の強固な意志を示すものであると同時に、私たち一人ひとりが、そして企業が、災害への備えを「総合力」として再構築する契機となるべきだ。この検閲を成功させ、その教訓を活かすことが、将来の甚大な被害を防ぐための、最も確実な一歩となるだろう。
京都市消防団、令和7年度総合査閲へ！ 大塚分団が力強く出陣！,京都市消防局
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