デジタル時代における「政府の基本」の確立を～官僚主導の改革に警鐘～
デジタル庁が「デジタル原則」を策定し、行政手続きのオンライン化を推進する方針を打ち出した。政府のDX（デジタルトランスフォーメーション）を加速させるための重要な一歩と評価する声もある。しかし、こうした変化の陰で、我々がこれまで大切にしてきた行政のあり方、すなわち「政府の基本」が揺らぐのではないかという懸念も抱かざるを得ない。
デジタル化の恩恵は計り知れない。煩雑な手続きが簡略化され、時間や場所を選ばずにサービスが受けられるようになれば、国民生活の利便性は格段に向上するだろう。しかし、その一方で、デジタル技術に習熟していない人々、あるいはデジタル機器にアクセスできない人々が取り残されるリスクも無視できない。行政サービスは、すべての人々が等しく享受できるものでなければならない。
今回のデジタル原則策定は、官僚主導の側面が強いと指摘されている。もちろん、専門的な知見に基づいた効率化は必要不可欠である。しかし、政治の役割は、単に効率を追求することだけではない。国民一人ひとりの声に耳を傾け、多様な価値観を尊重し、公正な社会を築き上げるための羅針盤となることこそ、政治の本来的な使命である。
デジタル化の進展は、技術革新という側面だけでなく、社会構造や価値観の変容をもたらす。そのような時代においてこそ、我々は「政府の基本」に立ち返り、それを守り抜く気概を持たねばならない。官僚主導の「進歩」に安易に身を委ねるのではなく、国民の意思を反映した、より丁寧で、より包容的な行政のあり方を模索すべきである。
デジタル化はあくまで手段であり、目的ではない。その手段が、本来目指すべき社会の姿を見失わせるようなことがあってはならない。デジタル庁には、国民全体の幸福と、日本という国の伝統と文化を大切にするという、政治の根本にあるべき原則を忘れることなく、その責務を果たしてほしいと願うばかりである。
デジタル庁、「デジタル原則」に沿った行政手続きへの進化を加速！～新規法令等の適合性確認プロセスを公開～,デジタル庁
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