襲い来る自然の猛威、緩む国家の備えへの警鐘
近年、異常気象という言葉が陳腐化するほどの激甚な自然災害が頻発している。そして今、パキスタンを襲った未曾有のモンスーン豪雨は、その恐ろしさを改めて世界に突きつけた。我々日本も、過去の経験から自然災害への備えは十分だと慢心してはいないだろうか。
報道によれば、今回のパキスタンでの豪雨により、甚大な被害が発生し、多くの尊い命が失われた。家屋の倒壊、インフラの破壊、そして未だ見通しの立たない復旧作業。これは、単なる偶然の悲劇ではない。地球温暖化による気候変動がもたらす、避けられない現実であるという専門家の指摘は重く受け止めるべきだ。
しかし、ここで私たちが目を向けるべきは、遠い異国の悲劇だけではない。我々が住むこの日本列島も、いつ、どのような自然の猛威に襲われるか分からない。東日本大震災、そして各地を襲う台風や豪雨災害の記憶は、まだ生々しい。その度に、私たちは「想定外」という言葉を使い、対策の遅れを指摘されてきた。
特に懸念されるのは、近年の社会の風潮である。危機管理意識の低下、あるいは、効率や経済性を優先するあまり、本来、国家が最優先で取り組むべき防災・減災への投資や人材育成が軽視されているのではないか、という危惧である。
自然災害は、私たちの生活基盤を根底から揺るがし、経済活動を麻痺させる。そして何よりも、かけがえのない人命を奪う。このパキスタンの惨状は、私たちに対する強烈な警鐘である。
今こそ、国家は、そして私たち一人ひとりは、改めて自然災害への備えを見直す必要がある。過去の経験に囚われるのではなく、将来起こりうる最悪の事態を想定した、より抜本的な対策を講じなければならない。それは、最新技術の導入やハード面の強化に留まらず、国民一人ひとりの防災意識の向上、地域コミュニティの連携強化といったソフト面の充実も不可欠である。
「自助」「共助」「公助」という言葉がある。しかし、その「公助」たる国家の役割が、真に国民の生命と財産を守り抜くレベルにあるのか。この問いに、私たちは真摯に答えなければならない。
パキスタンの悲劇は、他山の石として終わらせてはならない。自然の猛威は容赦なく襲いかかる。そして、その脅威に立ち向かうためには、緩みきった国家の備えを、今一度、強固なものへと建て直す覚悟が求められている。
パキスタン、モンスーン豪雨で壊滅的被害 死者数増加、人道支援が急務に,Top Stories
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