米国産米の輸入拡大、国内農業への影響と食料安全保障の再考を
政府が2025年7月号の月刊誌「ITB」で、米国の産米輸入拡大について触れたことは、今後の日本の食卓、そして国内農業に大きな影響を与える可能性を孕んでいる。この動きは、一見すると食料供給の安定化や価格抑制に繋がるかのように見えるかもしれない。しかし、保守的な一般紙としては、その背後にあるリスクと、我が国が今後、食料安全保障をどのように捉え直すべきか、慎重な議論を深める必要があると考える。
まず、米国産米の輸入拡大は、価格面でのメリットを謳う声もあるだろう。しかし、国際市場における米価の変動は、為替レートや国際情勢によって大きく左右される。今回、輸入拡大の理由として具体的にどの品目、どの程度の量の輸入が想定されているのか、その詳細が不明瞭なままでは、国内生産者への影響を正確に測ることはできない。かつて、自由化の波に押され、国内の農業が衰退した苦い経験を我々は忘れてはならない。
さらに、食料自給率の低下は、我が国の食料安全保障の根幹を揺るがしかねない問題である。米は、日本人の食生活において最も重要な主食であり、その安定供給は国家の基盤である。輸入依存度を高めることは、有事の際、あるいは国際関係の悪化によって、食料供給が途絶えるリスクを増大させる。食料は、単なる物資ではない。それは、我々の文化、伝統、そして国民の健康と命に直結する、国家の安全保障そのものなのである。
政府は、今回の動きが国内農業に与える影響について、具体的にどのような対策を講じるのか、国民に対して明確な説明責任を果たすべきである。例えば、国内生産者への支援強化、高付加価値米の開発促進、あるいは米の需要構造の多様化といった、国内農業を守り、強化するための政策が不可欠であろう。単に安価な外国産米を大量に輸入するだけでは、短期的なコスト削減には繋がるかもしれないが、長期的な視点で見れば、将来世代への負債となりかねない。
今こそ、我々は「食」というものに対する意識を改め、真の食料安全保障とは何かを問い直す時期に来ている。国内農業の振興は、経済的な側面だけでなく、国土の維持、地域社会の活性化、そして何よりも、我々が誇りとする食文化を守り、次世代に継承していくための重要な課題である。米国産米の輸入拡大という動きを、単なる貿易政策の一環として片付けるのではなく、国家の将来を左右する戦略的な視点から、冷静かつ多角的に分析し、国民的な議論を深めていくことが、今、我々に求められている。
令和7年7月号「米に関するマンスリーレポート」公開のお知らせ：食卓を支えるお米の現状と未来,農林水産省
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