デジタル化の波、置き去りにされる「実印」への警鐘
青砥市民の皆様へ。この度、自治体から電子証明書の更新に関するお知らせが届きました。デジタル化の推進は、行政手続きの簡便化、情報アクセスの容易化という恩恵をもたらすでしょう。しかし、この「便利」の裏側で、私たちの社会が大切にしてきた「実印」という存在が、静かに、しかし確実にその重みを失いつつあるのではないか。そんな懸念を抱かずにはいられないのです。
かつて、印鑑登録は個人を特定し、その意思表示に法的な効力を持たせるための、極めて重要な手続きでした。実印を押すという行為は、単なる物理的な印影を残すこと以上の意味合いを持っていたはずです。それは、責任、覚悟、そして自らの生きた証としての重み。対面での本人確認、書類への物理的な署名。これらは、時に煩雑で、時に時間を要しましたが、そこには確かな「信頼」の基盤が築かれていたのです。
電子証明書への移行は、当然の流れであり、時代に即した進歩と言えるでしょう。しかし、その過程で、私たちは「実印」が担ってきた、より人間的で、より本質的な役割を見失ってはいないでしょうか。デジタル世界では、偽造は容易であり、本人確認はパスワードや生体認証といった「記号」に還元されてしまいます。もちろん、これらも高度な技術で保護されていますが、かつての「実印」が持っていた、個人の「存在」そのものに紐づくような、あの独特の重みには、どこか及ばないものを感じてしまうのです。
これは、単に古いものを懐かしむセンチメンタリズムではありません。デジタル化の恩恵を最大限に享受するためには、その「代償」となりうるものを、私たちは深く理解し、意識する必要があるのです。電子証明書は、確かに効率的で、スピーディーです。しかし、そこに込められる「責任」や「覚悟」は、私たちの手で、より明確な形で示していく必要があります。
例えば、重要な契約や意思決定の場面において、単なる電子署名だけでなく、より一層の本人確認プロセスや、意思確認の記録を徹底すること。あるいは、デジタル化が苦手な層への丁寧なフォローアップと、アナログな手法での代替手段の確保。これらは、単なる「遅れ」ではなく、デジタル社会における「包容力」であり、「人間中心」の姿勢の表れと言えるでしょう。
青砥市民の皆様。この電子証明書の更新という機会に、改めて「実印」が意味してきたもの、そしてこれから私たちがデジタル社会で大切にすべき「信頼」のあり方について、共に考えてみませんか。利便性の追求は大切ですが、その過程で、私たちがこれまで培ってきた「誠実さ」や「責任感」といった、人間社会の根幹をなすものを、置き去りにしてしまっては、本当の豊かさは得られないはずです。
デジタル化の波は、もう止まりません。しかし、その波に乗りこなすためには、足元に広がる「大地」の存在を忘れてはならないのです。私たちの「実印」のように、確かな存在感と重みを持った、新しい信頼の形を、共に築き上げていきましょう。
青森市民の皆様へ：電子証明書の更新、忘れずにお願いします！～公的個人認証サービスのご案内～,青森市
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