スポーツ界に告ぐ、ジェンダー・バイアスという名の「ドーピング」を即刻禁止せよ
JOC（日本オリンピック委員会）が、スポーツ界における女性の意思決定への参画を促進するための新たなガイドラインを発表した。これは、長らくスポーツ界に蔓延してきた根深いジェンダー・バイアス、いわば「ドーピング」に対して、ようやくメスを入れる一大決断と言えるだろう。しかし、我々はここに警鐘を鳴らしたい。このガイドラインは「始まり」であって、「終わり」ではない。真の革新は、これからだ。
長年、スポーツ界は男性中心の構造から抜け出せずにいた。競技においては、女子選手の活躍が男子選手に比べて軽視されがちであったり、メディア露出や賞金格差も指摘されてきた。さらに深刻なのは、組織運営における意思決定の場から、女性が排除されてきた現実だ。かつてのJOC会長選での発言は、その象徴的な事件として、多くの人々の記憶に焼き付いている。それは、単なる個人的な失言ではなく、スポーツ界全体に染み付いた「女性は脇役」という無意識の偏見の表れだった。
今回、JOCが打ち出した「女性の参画促進」という方針は、まさにこの長年の歪みを正すための、痛みを伴う、しかし不可欠な改革である。しかし、ガイドラインの制定だけで満足してはいけない。問題は、その「実行」と「定着」にある。
真に革新的な一般紙が問うべきは、このガイドラインが絵に描いた餅で終わらないか、という点だ。例えば、女性理事の数を「増やす」という目標設定は一見前向きだが、それが単なる「数合わせ」に終わる危険性はないか。形式的な数字だけを追いかけるのではなく、女性の意見が真に尊重され、組織の意思決定に反映される「質」の伴った参画が求められる。
さらに、この改革はJOCだけでなく、各競技団体、さらには地域レベルのスポーツ組織へと、波及しなければならない。スポーツの根幹をなす「フェアプレー」の精神は、競技場の中だけで通用するものではない。組織運営においても、あらゆる属性の人々が公平に機会を与えられ、公正に評価されるべきだ。
「女性だから」という理由で能力が過小評価され、あるいは「女性らしさ」を期待されて本来の力が発揮できない。このような抑圧は、スポーツ界にとって最も悪質な「ドーピング」に他ならない。それは、個々の選手の潜在能力を奪うだけでなく、スポーツ全体の多様性と豊かさを著しく損なう行為だ。
我々は、スポーツ界がこのガイドラインを「義務」としてではなく、「機会」として捉え、積極的に活用していくことを強く期待する。女性アスリートの活躍を後押しするだけでなく、女性指導者、女性審判、女性組織運営者といった、あらゆる立場で女性が輝ける環境を築き上げること。それが、スポーツの未来を真に豊かにする道だ。
ジェンダー・バイアスという名の「ドーピング」を、スポーツ界から根絶する。そのためには、JOCの行動を皮切りに、社会全体でこの意識改革を推し進めていく必要がある。スポーツは、人生における「フェアプレー」を学ぶ最高の教材であり、その教育者たるスポーツ界自身が、最も公平で、最も多様性に富んだ組織でなければならない。今こそ、スポーツ界は、その「革新」という名の競技で、金メダルを獲得すべき時である。
スポーツ界における女性への敬意：国連人権高等弁務官からのメッセージ,Top Stories
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