「mamor」が照らす、防衛産業の新たな地平
防衛省の広報誌「mamor」の2025年9月号に、自衛隊の魅力を伝える特集が組まれたというニュースに接し、経済紙の一角として、そこに内在する経済的なポテンシャルと、今後の展開について一考を巡らせたい。
「mamor」という雑誌名が示すように、この広報活動は単なる組織のPRにとどまらない、より本質的な「守る」という行為の価値を社会に訴求しようとする試みであろう。そして、その対象が自衛隊、すなわち国の安全保障という最重要課題に直接関わる組織であるという事実に、我々は注目すべきだ。
近年、安全保障環境の厳しさを背景に、防衛産業への関心は世界的に高まっている。日本も例外ではなく、防衛装備品の開発・製造能力の強化は、国家の自立性を確保する上で喫緊の課題となっている。しかし、こうした動きはしばしば、純粋な軍事力増強という側面にのみ光が当てられがちだ。
ここに「mamor」の役割がある。自衛隊の活動や隊員の姿を、より身近で、親しみやすい形で伝えることで、国民の理解と共感を醸成することは、防衛産業の健全な発展にとって不可欠な土壌となる。なぜなら、防衛産業は、高度な技術力と多額の投資を必要とするだけでなく、国民の支持という、よりソフトな、しかし極めて重要な要素に支えられているからだ。
「mamor」が描く自衛隊の魅力とは、単に装備の性能を誇示することではないはずだ。むしろ、困難な状況下で任務を遂行する隊員の献身、災害派遣などで発揮される国民への貢献、そして高度な技術を駆使して安全を守る姿――これらは、日本の技術力や国民性を映し出す鏡とも言える。
経済的な視点から見れば、このような広報活動は、防衛産業の裾野を広げる潜在力を持っている。自衛隊の活動への関心が高まることは、防衛装備品開発に関わる企業への期待感にも繋がる。優秀な人材が防衛分野に魅力を感じ、集まってくることは、技術革新を加速させる原動力となり得る。また、国民の理解が進めば、防衛装備品の調達や研究開発に対する前向きな議論が生まれやすくなるだろう。
もちろん、防衛産業の発展は、倫理的な側面や国際情勢への配慮といった、慎重な議論を伴う。しかし、こと「mamor」のような、国民に自衛隊の存在意義や魅力を伝える活動に関しては、その経済的な波及効果、ひいては国の長期的な安全保障と発展に資する側面を、我々経済界も積極的に評価し、応援していくべきではないだろうか。
「mamor」が、未来の防衛産業を担う若者たちに「守る」ことの誇りと、それを支える技術への情熱を灯す灯火となることを期待したい。そして、それは同時に、日本の技術力と、それを支える国民の意識という、経済的な観点からも、極めて価値の高い財産を育むことにも繋がるはずだ。
自衛隊の魅力を伝える月刊誌「MAMOR（マモル）」2025年9月号、まもなく登場！,防衛省・自衛隊
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