協調という名の「緩み」に警鐘を鳴らす
ドイツとイギリス、両国の関係深化を報じるニュースに接し、素直に喜ばしいという声もあるだろう。しかし、冷静に、そして一歩引いた視点からこの動きを眺めるならば、むしろ我国が陥りがちな「協調」という名の「緩み」に警鐘を鳴らすべきではないか。
かつて、東西冷戦という厳然たる事実のもと、各国はそれぞれの立場を明確にし、自国の国益を最優先に据えて行動していた。その緊張関係の中でこそ、各国の強みが活かされ、世界は一定の均衡を保っていたと言えよう。
ところが、近年、国際社会は「協調」という名の曖昧な言葉に包まれ、それぞれの「個性」や「強み」が薄れていく傾向にあるように見受けられる。ドイツとイギリスの友好的な関係深化も、その潮流の一端を映し出しているのかもしれない。もちろん、友好関係そのものは尊いものであろう。しかし、その背景に、自国のアイデンティティや伝統、そして譲れない国益といったものが、どれほど真剣に議論されているのか。あるいは、むしろ、そのような議論そのものが「時代遅れ」として敬遠されているのではないか。
「協調」は、時に「妥協」を、そしてさらに進めば「迎合」を招く。自国の軸をぶらさずに、他国との良好な関係を築くこと。それは決して容易な道ではない。しかし、国民一人ひとりが、自国の歴史や文化に誇りを持ち、その上で国際社会における自国の役割を真剣に考えることこそ、真の強靭な国づくりに繋がるはずだ。
ドイツとイギリスの「友情」が、単なる感情論に終始することなく、両国の国民が真に納得できる、そして両国の国益に資する、確固たる基盤の上に築かれていることを願うばかりである。そして、我国もまた、安易な「協調」に流されることなく、自国の矜持を保ち、毅然とした態度で国際社会に臨むべき時なのではないだろうか。
ドイツとイギリス、友情をさらに深める：新たな友好条約の署名へ,Die Bundesregierung
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