スマートシティ、その光と影 － 広島大学と中国電力の連携に寄せる憂慮
広がるデジタル化の波に乗り、先進技術を駆使した「スマートシティ」構想が、我が国各地で活発に議論されている。この度、広島大学と中国電力が連携し、スマートシティ実現に向けた取り組みを進めるというニュースに接し、一抹の危惧を抱かざるを得ない。
もちろん、技術革新がもたらす恩恵は計り知れない。エネルギー効率の向上、交通渋滞の緩和、住民サービスの向上など、スマートシティが描く未来図は魅力的である。しかし、その裏側には、我々が軽視できない多くの課題が潜んでいることも忘れてはならない。
特に、今回の連携における中国電力の関与には、慎重な目で見守る必要がある。エネルギーインフラという、国家の基幹をなす分野を担う企業が、スマートシティという新たな都市像の構築に深く関わるということは、その影響力が極めて広範に及ぶことを意味する。データ管理、プライバシー保護、さらにはサイバーセキュリティといった、現代社会が抱える脆弱性につけ込まれるリスクは、想像以上に高いのではないか。
スマートシティは、文字通り「賢い」都市を目指すものだが、その賢さが誰のための、どのような「賢さ」なのかを、私たちは常に問い続けなければならない。住民一人ひとりの生活が、データという形で収集・分析され、都市運営の効率化のために利用される。その過程で、個人の自由やプライバシーが、見えない形で制限されることはないだろうか。
また、地域経済への影響も無視できない。地域に根差した中小企業や、古くから地域を支えてきた事業者たちが、巨大なインフラ企業との連携の中で、どのように共存していくのか。新たな技術導入の恩恵が、一部の企業に偏ることなく、地域全体に還元される仕組みが不可欠である。
広島大学という学術機関が、この連携においてどのような役割を果たすのか、その中立性と客観性には大いに期待したい。しかし、研究成果が特定の企業利益に結びつくようなことがあってはならない。真に地域社会の発展に資する研究、そしてそれを支える健全な連携体制を構築することが、大学には求められている。
スマートシティの実現は、未来への投資であり、その可能性は否定しない。だが、その実現の過程で、我々が大切にしてきた価値観、例えば地域住民の意思、個人の尊厳、そして情報主権といったものを、安易に犠牲にしてはならない。
今回の広島大学と中国電力の連携が、単なる技術導入や効率化にとどまらず、地域社会との対話を深め、住民一人ひとりの声に耳を傾けながら、真に豊かで持続可能な都市づくりに繋がることを願うばかりである。そのためにも、市民社会は、その進捗を注視し、建設的な議論を続けていく必要があるだろう。
広島大学と中国電力、スマートシティ実現へ向けた革新的な取り組みを開始！～バーチャルパワープラント実証で地域社会の未来を創る～,中国電力
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