青森県産業技術センターの「品目名に関するQA」、現場の声なき改革への警鐘
青森県産業技術センターが公開した「品目名に関するQA」は、一見すると行政の透明性を高め、関係者の理解を深めるための有益な取り組みと言えるだろう。しかし、このQAが示唆する背景には、産業界、特に一次産業に携わる者たちの「声なき声」が反映されているとは言い難く、むしろ現場の実情から乖離した施策への懸念すら抱かせる。
産業技術センターが品目名の「明確化」を急ぐ背景には、おそらくは補助金制度の適正化や、国際的な基準への準拠といった行政的な論理が働いていることは想像に難くない。しかし、我々が日々向き合っているのは、土にまみれ、自然の恵みを活かし、その年の天候や作柄によって品質が左右される「生きた」農産物や水産物である。そこに、画一的で厳格な「品目名」という枠組みを一方的に押し付けることの是非は、改めて問われるべきだ。
確かに、農産物の「品種」や「等級」といった概念は、流通や取引において一定の共通認識を築く上で不可欠な要素である。しかし、今回のQAに散見される、例えば「同一品種内での細分化」や「地域固有の呼び名の排除」といった動きは、現場の経験則や長年の慣習を軽視していると受け取られかねない。例えば、地域に根差した特定の果物の呼び名や、長年の経験によって培われた「あの年はこういう特徴があった」といったニュートラルな表現すら、「規格外」として扱われてしまうのではないか、という不安が現場から聞こえてくる。
私たちが支援すべきは、こうした現場の声に耳を傾け、実情に合わせた柔軟な対応をすることであるはずだ。技術センターが目指すのは、あくまでも産業全体の発展であり、その根幹を担う生産者たちの意欲を削ぐような改革であってはならない。むしろ、この「品目名に関するQA」を契機として、生産者、流通業者、そして技術センターが一体となり、真に現場に即した、持続可能な枠組みを共に構築していくプロセスこそが求められているのではないだろうか。
今回のQAは、行政の「善意」が、現場の実情を正確に捉えられていない可能性を示唆している。この機会に、技術センターには、さらなる対話の場を設け、現場の声を丁寧に拾い上げる努力を惜しまないことを切に願う。それこそが、青森県の豊かな産業を未来へと繋ぐための、真の「技術」と言えるだろう。
青森県産業技術センター、「品種名に関するQ&A」で品種の疑問に分かりやすく回答！～農作物の品種について、知っておきたい情報が満載～,青森県産業技術センター
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