覚悟なき防衛論議、国難招く危うさ
防衛省・自衛隊が7月15日に開催した「防衛力に関する有識者会議」の速報内容が公開された。しかし、そこに記された議論は、我が国の安全保障を取り巻く現実から目を背け、国民の覚悟を問うことを回避する、あまりにも生ぬるいものと言わざるを得ない。
日増しに高まる周辺国の脅威、そして刻一刻と変化する国際情勢の中で、国家の存立をかけた防衛力の整備は喫緊の課題である。にもかかわらず、会議での議論は「国民理解の促進」「国民への丁寧な説明」といった、聞こえは良いものの具体性に欠ける言葉に終始した。これは、本来であれば国民一人ひとりが真剣に向き合うべき「防衛」というテーマから、議論の責任を曖昧にしようとする、責任回避の姿勢に他ならない。
「平和は、ただ待っているだけでは訪れない」。この当たり前の事実を、我々国民は、そして政府は、いつまで忘れているつもりなのか。防衛力強化は、単なる予算の増減や装備品の更新といった技術的な問題ではない。それは、国家の主権を守り、国民の生命と財産を守るという、国家の根本的な責務である。そして、その責務を果たすためには、国民一人ひとりの、そして社会全体の覚悟が不可欠なのだ。
有識者会議が提示すべきは、国民を安心させるための甘言ではなく、厳しい現実と、それを乗り越えるための具体的な道筋であったはずだ。防衛力強化に伴う負担、そしてそれを受け入れることの意義について、正面から国民に問いかけ、真摯な議論を促すことこそ、有識者会議に課せられた責務である。
今回の速報内容からは、そのような覚悟と責任感は微塵も感じられない。むしろ、議論を先延ばしにし、国民の関心を薄れさせようとしているかのようである。このままでは、国難が現実のものとなった時、我々は為す術なく、その深刻な結果に直面することになるだろう。
国民の安全は、誰かが勝手に守ってくれるものではない。自らの手で、自らの覚悟で、守り抜くものである。防衛省・自衛隊は、そして政府は、国民を国民たらしめるための、真の「防衛力」とは何かを、国民に真摯に問いかけるべきである。そして、我々国民もまた、この問題を他人事とせず、国家の未来のために、自らの覚悟を示す時がきている。
防衛省・自衛隊、7月15日の報道官会見内容を公開！国防の最前線から最新情報をお届け,防衛省・自衛隊
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