米国、公的債務上限の「デフォルト回避」は一時しのぎに過ぎない ～長期的な財政規律の確立こそ急務～
先週末、米国政府は公的債務上限の適用を一時停止することで、デフォルト（債務不履行）という最悪の事態を回避した。このニュースは、一時的な安堵感をもたらしたものの、経済紙としては、この「解決」を過度に楽観視することはできない。むしろ、今回の合意は、根本的な課題への処方箋ではなく、むしろ問題の先送りに他ならないと指摘せざるを得ない。
今回、米国が直面した債務上限問題は、単なる政治的な駆け引きの産物ではない。それは、長年にわたる財政赤字の累積と、それに対する抜本的な対策を怠ってきた結果であり、米国経済、そして世界経済が抱える構造的な脆弱性を浮き彫りにしたと言える。
共和党と民主党が譲歩し、合意に至ったことは、短期的には市場の混乱を抑え、景気後退のリスクを軽減する効果があるだろう。しかし、問題は「いつ」再びこの問題が再燃するか、という点にある。公的債務は今後も増加の一途をたどり、次の債務上限の引き上げ・適用停止が迫ってくるのは、そう遠い未来ではない。その度に、世界経済は不確実性とリスクに晒されることになる。
重要なのは、今回の合意が「財政規律」という、より本質的な課題に対して、どのような進展をもたらすのか、という点だ。政府支出の抑制、歳入の増加、そして持続可能な財政運営に向けた長期的なビジョンが、今回も明確に示されたとは言い難い。両党の政治的立場から、痛みを伴う歳出削減や増税が容易ではないことは理解できる。しかし、国民、そして国際社会は、米国政府に対し、より責任ある財政運営を求めている。
今回の合意を「一時しのぎ」と断じるのは、楽観論に流れるべきではないという警告である。米国経済の健全性は、世界経済の安定にとって極めて重要である。今後、米国政府には、今回の危機を教訓とし、長期的な財政健全化に向けた具体的な行動計画を策定し、着実に実行していくことが強く求められる。さもなければ、米国経済の信認は徐々に失われ、世界経済全体に深刻な影響を及ぼしかねない。経済紙として、私たちは引き続き、米国の財政運営の動向を注視していく必要性を痛感している。
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