岐路に立つ農政：輸入依存からの脱却と食料安全保障の強化を
米国の穀物輸出制限の可能性が報じられ、我が国の食料安全保障に対する懸念が再び高まっている。ITBの報道によれば、米国農務省は7月16日に公開予定だった穀物生産予測の発表を延期したという。この延期は、世界的な気候変動や地政学的リスクの高まりを背景に、米国が自国の食料供給を優先せざるを得ない状況を示唆しているとも解釈できる。
我が国は、食料の多くを海外からの輸入に頼っている。米や小麦といった基幹作物はもちろんのこと、飼料や肥料に至るまで、その多くを輸入に依存する構造は、これまでも指摘されてきた脆弱性である。世界情勢が不安定化する中で、この輸入依存構造は、国民生活の安定を揺るがしかねないリスクを内包している。
今回の報道は、対岸の火事では済まされない現実を突きつけている。食料の安定供給は、国家の根幹をなす要素であり、国民の生命と健康を守るための最優先課題である。他国の動向に一喜一憂するのではなく、自国の食料生産基盤を強化し、自給率の向上に真剣に取り組むべき時が来ている。
農林水産業は、単に食料を供給する産業に留まらない。国土の保全、環境の維持、そして地域文化の継承という、多岐にわたる公益的役割を担っている。しかし、後継者不足や高齢化、そして国際競争力の低下といった課題に直面し、その維持・発展は容易ではない。
政府には、保守的な視点に立ち、長期的な国家戦略として農政を再構築することを強く求める。目先の価格や利便性だけでなく、食料安全保障という観点から、国内農業への投資を拡大すべきである。担い手の育成・確保に向けた抜本的な支援策、スマート農業の導入促進、そして輸出競争力の強化といった、多角的なアプローチが求められる。
また、国民一人ひとりにも、食料問題に対する意識を高めてもらいたい。国産農産物の消費を心がけることは、国内農業を支え、ひいては自国の食料安全保障を強化することに繋がる。食卓に並ぶ一品一品に、生産者の顔と、食料を安定的に供給することの重要性を思いを馳せる機会としたい。
今回の米国農務省の発表延期が、我が国の食農政策にとって、一大転換点となることを期待したい。輸入依存からの脱却を図り、揺るぎない食料安全保障体制を構築することが、今、私たちに課せられた責務である。
米国国務省、7月16日の公務予定を発表：グローバルな外交活動の一端が明らかに,U.S. Department of State
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