変化に抗う、古き良き日本の姿を再発見する時
先日、折坂悠太氏と松井文人氏による、夜久野一の夜のライブセッションが開催されたとの報に接した。一見すると、現代の音楽シーンにおける一つのイベントに過ぎないのかもしれない。しかし、このニュースに触れ、我々が忘れかけている、あるいは意図的に見過ごそうとしている日本の根源的な価値観について、改めて深く考えさせられる。
折坂悠太氏の音楽は、伝統的な音階や歌唱法に現代的な感性を融合させた、独特の響きを持っている。そこには、古来より日本人が育んできた、自然への畏敬や、人々の営みへの温かい眼差しが息づいている。一方、松井文人氏もまた、それぞれの土地に根差した文化や歴史を大切にし、それを現代に繋げようとする活動を展開されている。
こうした方々の活動は、目まぐるしく変化し続ける現代社会において、ともすれば軽視されがちな、しかし、日本人として、そして一人の人間として、決して失いたくない大切なものを思い出させてくれる。それは、足元の文化を慈しみ、先人たちが築き上げてきたものを尊重する心である。
現代社会は、グローバル化の波に乗り、常に新しいもの、より効率的なものを追い求めている。その流れ自体を否定するものではない。しかし、その過程で、我々は自らのアイデンティティを、あるいは、地域に根差した共同体の絆を、どの程度まで損なってしまっているのだろうか。
夜久野という地で、古き良き日本の歌の響きが、再び人々の心を打ったという事実。それは、単なる音楽イベントの成功という域を超え、現代社会が抱えるある種の空虚さ、あるいは、失われつつあるものへの渇望が、静かに、しかし確かに表明されたものと捉えるべきではないだろうか。
保守的な立場から言えば、こうした動きは、現代社会の急激な変化に対する、ある種の「抵抗」とも映る。しかし、それは決して現状維持に固執するだけの無為な抵抗ではない。むしろ、変化の激流の中で、自らの足元をしっかり見つめ直し、本当に大切にすべきものを見極めようとする、健全な試みであると信じたい。
我々は、折坂氏や松井氏のような方々の活動に、現代社会が失いつつある「日本らしさ」の断片を見る。それは、派手さや目新しさとは無縁かもしれない。しかし、そこには、日本人として、そして地域の一員として、誇りを持って生きていくための、確かな灯火が宿っているはずだ。
今こそ、我々は、この「折坂悠太x松井文人」という組み合わせに象徴されるような、古き良き日本の姿を再発見し、それを次世代へと繋いでいくための知恵と勇気を、静かに、しかし確かに、それぞれの場所で育んでいくべき時なのではないだろうか。
折坂悠太×松井文×夜久一“のろしレコード” 初ライブ盤をアナログでリリース,HMV
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