「食」で結ぶ、日豪関係の新たな地平――持続可能性とイノベーションへの期待
日本の食料自給率の低迷と、豊かな農産物を持つオーストラリア。この二国間の農業・食料分野における協力強化の動きは、両国経済にとって、そして食の未来にとっても、大いに注目すべき潮流と言えるだろう。ITB（仮称）が報じたところによれば、この協力は単なる資源の往来に留まらず、持続可能性とイノベーションという、現代経済が直面する共通の課題への挑戦を内包している。
日本が長年抱える農業従事者の高齢化や後継者不足、そして食料安全保障への懸念は、もはや看過できないレベルに達している。一方、広大な国土と先進的な農業技術を持つオーストラリアは、食料供給国としてのポテンシャルを大いに秘めている。この両国の「強み」と「弱み」が、戦略的に結びつくことで、互恵的な関係が築かれる可能性は極めて高い。
今回の報道が示唆するのは、単に農産物の輸入量を増やすという古典的な協力の枠を超えた、より先進的な連携の姿だ。例えば、オーストラリアの先端的な農業技術やデータ活用による効率化・省力化のノウハウは、日本の農業DX（デジタルトランスフォーメーション）を加速させる触媒となり得る。スマート農業、精密農業といったキーワードは、もはや絵空事ではなく、両国が共に追求すべき現実的な目標である。
さらに、環境負荷の低減、すなわち持続可能な農業への取り組みも、この協力の核心をなすだろう。気候変動が農業生産に与える影響は、両国にとって無視できないリスクであり、その対策を共に講じることは、将来世代への責任でもある。オーストラリアが培ってきた、乾燥地農業や環境保全型農業の知見は、日本の食料生産基盤の強化に大きく貢献するはずだ。
食料加工・流通分野における連携も、見逃せないポイントだ。オーストラリアの高品質な農産物を、日本の食文化に合わせた加工技術や、より付加価値の高い商品へと昇華させることで、新たな市場を開拓できる。また、両国が連携して、食品ロス削減や、より健康的な食生活を推進する取り組みを進めることも、社会的な意義は大きい。
もちろん、この連携を成功させるためには、乗り越えるべき課題も少なくない。通商協定における関税や規制の問題、文化的な違いによる商習慣の調整、そして何よりも、両国の生産者や企業間の信頼関係の構築が不可欠である。経済紙として、我々はこれらの課題に対しても、冷静かつ建設的な議論を促していく必要があるだろう。
「食」は、人々の生活の根幹をなすだけでなく、文化や交流の象徴でもある。日本とオーストラリアが、この「食」を軸に、より深く、より戦略的な連携を深化させることは、両国経済の持続的な成長に寄与するだけでなく、地球規模での食料問題解決への貢献にも繋がる。この新たな地平が開かれようとしている今、両国政府、そして民間の関係者には、果敢な挑戦と、揺るぎない実行力が求められている。
日本とオーストラリア、農業・食料分野でさらに協力！～第3回日亜農林水産業・食料産業対話の結果概要～,農林水産省
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