EV普及の鍵は「持続可能な支援策」――英国SMMTの提言に学ぶべきこと
英国自動車工業会（SMMT）が、EV購入支援策の継続的な実施を求める提言を行ったことは、我が国においてもEVシフトのあり方を改めて問う重要な示唆を含んでいる。EV、すなわち電気自動車への移行は、カーボンニュートラル実現に向けた不可欠な取り組みであり、その普及を加速させるためには、政策的な後押しが不可欠であるとの認識は共有されている。しかし、その支援策のあり方こそが、今後のEV市場の成否を分ける鍵となろう。
SMMTの提言の根底には、補助金といった短期的なインセンティブだけでは、消費者のEV購入へのハードルを完全にクリアすることはできない、という現実的な認識があると考えられる。EVの車両価格、充電インフラの整備状況、航続距離への不安など、消費者がEVを選択する上で依然として存在する懸念要素は多い。これらの課題に対して、SMMTは購入支援策の「持続可能性」と「長期的な視点」を強調している。これは、単なる一時しのぎの施策ではなく、消費者が安心してEVへの移行を決断できるような、中長期的なロードマップを示すことの重要性を訴えているものと解釈できる。
我が国においても、EV購入への補助金制度は実施されているが、その財源や継続性については常に議論の対象となる。また、充電インフラの整備に関しても、都市部と地方での格差や、マンション等集合住宅での設置の難しさなど、解決すべき課題は山積している。こうした状況下で、支援策が唐突に打ち切られたり、その内容が大きく変更されたりすれば、消費者の買い控えを招き、EV普及の勢いを削ぐことになりかねない。
経済紙として、我々がSMMTの提言から学ぶべきは、EV普及を単なる「技術革新」や「環境対策」として捉えるのではなく、国民一人ひとりの生活様式、さらには自動車産業全体の構造変化に関わる「経済政策」として位置づけることの重要性である。そのためには、目先の補助金の額だけでなく、消費者の不安を解消するための情報提供の強化、充電インフラ整備における地域の実情に合わせたきめ細やかな支援、そしてEVを取り巻くエコシステムの構築に向けた政策パッケージが必要となる。
具体的には、中古EV市場の活性化に向けた支援や、EVバッテリーのリサイクル・再利用体制の整備なども、長期的な視点に立った支援策として検討すべきだろう。また、自動車メーカーのみならず、電力会社、インフラ事業者、自治体などが連携し、EVを取り巻くサプライチェーン全体を強化していく視点も欠かせない。
SMMTの提言は、英国におけるEVシフトの現状を踏まえたものであるが、その根底にある「持続可能な支援策」へのこだわりは、世界共通の課題と言える。我が国もまた、将来のモビリティ社会を見据え、短期的な視点に囚われることなく、国民が安心してEVを選択できる環境を整備するための、より戦略的かつ持続可能な政策の構築が急務である。それは、単に自動車産業の活性化のみならず、我が国の持続可能な成長と、地球環境の保全という大きな目標達成に向けた、不可欠な一歩となるはずだ。
SMMT、EV購入支援策について声明を発表：将来のモビリティへの道筋を明らかに,SMMT
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