高齢者医療制度への新たな保険証・資格確認書導入に寄せる私たちの懸念
先の報道によると、政府は2025年秋から後期高齢者医療制度において、現行の健康保険証を廃止し、新たに「保険証」と「資格確認書」という二種類のカードを導入する方針を固めたとのこと。この制度変更は、国民皆保険制度の維持・強化を目的とするものだと説明されているが、私たち一般国民としては、その実効性や将来的な負担増への懸念を抱かざるを得ない。
現行の健康保険証は、シンプルで誰にでもわかりやすいシステムであった。それがなぜ、わざわざ「保険証」と「資格確認書」に分断されるのか。政府の説明によれば、現行の健康保険証にはマイナンバーカードとの連携が不十分な点や、資格確認に時間を要するケースがあるため、これを機に効率化を図るという。しかし、その効率化が、一体誰にとっての効率化なのか、甚だ疑問である。
むしろ、この二段階のシステム導入は、多くの高齢者の方々にとって混乱を招くのではないか。特に、デジタル技術へのアクセスが限られる高齢者の方々にとって、新たなカードの取得やその使い分けは、大きな負担となる可能性がある。一体、この制度変更によって、どれだけ多くの高齢者が医療機関での受診に戸惑い、あるいはアクセスを躊躇することになるのだろうか。医療は国民の権利であり、誰一人として疎外されてはならないはずだ。
さらに懸念されるのは、この制度変更が将来的な医療費負担増に繋がるのではないかという点である。政府は、マイナンバーカードの活用による効率化で、医療費の適正化を目指すとしている。しかし、こうした制度変更は、しばしば、その裏で保険料率の引き上げや自己負担額の増加といった形で国民の負担を増やす「仕掛け」となりがちである。国民皆保険制度を守るという大義名分のもとで、実質的な負担増が静かに進むことだけは避けねばならない。
現行の健康保険証の持つ、簡潔さと信頼性を損なうような制度変更は、慎重に進められるべきであった。国民の声に真摯に耳を傾け、制度の複雑化ではなく、より多くの国民が安心して医療を受けられるような、シンプルでわかりやすい制度設計こそが求められているのではないだろうか。政府には、今回の制度変更が、果たして国民、特に高齢者の生活をより良くするものなのか、その点を今一度、明確に示す責任がある。
後期高齢者医療制度の新しい保険証・資格確認書についてのお知らせ（八王子市）,八王子市
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