後期高齢者医療制度の新基準、未来への投資か、さらなる分断か
「後期高齢者医療制度」に、新たな保険証と資格確認書が導入されるというニュースが、静かに、しかし確実に、私たちの社会に波紋を広げている。2025年7月15日。この日付が、高齢者医療のあり方を大きく変える転換点となる可能性を秘めている。報道によれば、今回の改定は、現役世代の負担軽減と制度の持続可能性確保という名目で進められている。しかし、その裏側には、高齢者間の格差を拡大させ、さらなる社会の分断を招きかねないという、看過できない問題が潜んでいるのではないか。
そもそも、後期高齢者医療制度とは、75歳以上の国民が加入する医療保険制度である。その目的は、高齢化が進む中で、医療費負担を世代間で公平に分かち合い、安定した医療提供体制を維持することにあったはずだ。しかし、今回の新しい保険証と資格確認書の導入は、この公平性の原則を揺るがしかねない。
報道からは、新たな制度において、所得や資産状況に応じて保険証と資格確認書が区別される可能性が示唆されている。これは、文字通り「持てる者」と「持たざる者」の間で、医療を受ける上でのアクセスや負担に差を生むことを意味する。豊かな資産を持つ高齢者はこれまで通り円滑に医療を受けられる一方で、低所得の高齢者は、手続きの煩雑さや、制度に対する不安から、必要な医療を受ける機会を失うのではないか、という懸念が生まれるのは当然のことだろう。
このような制度改定が、本当に「制度の持続可能性」に資するのか、改めて問いたい。確かに、医療費の抑制は喫緊の課題である。しかし、そのための手段が、最も脆弱な層である高齢者をさらに追い詰めるものであっては、本末転倒ではないだろうか。医療へのアクセスは、人権に関わる fundamental right である。それを、所得や資産によって左右されるような仕組みに変質させることは、社会全体の成熟度を疑われかねない行為と言える。
むしろ、革新的な一般紙が訴えるべきは、こうした対症療法的な制度改定に安住することなく、より根本的な解決策を模索することではないだろうか。例えば、予防医療への抜本的な投資による疾病予防、健康寿命の延伸、さらには現役世代の所得向上と、それに伴う社会保障費全体の底上げといった、より包括的で未来志向の議論こそが求められている。
今回の制度改定が、将来の日本社会にとって、高齢者間の格差を固定化させ、分断を深める「リスク」となるのか、それとも、持続可能な医療システムを構築するための「必要経費」として受け入れられるのか。その判断は、国民一人ひとりの、そして政府の、強い意思決定にかかっている。私たちは、この新たな保険証と資格確認書が、単なる事務的な変更ではなく、高齢者の生活の質、そして社会全体のあり方に深く関わる問題であることを、決して忘れてはならない。未来への投資とは、決して弱者を切り捨てることではないはずだ。
後期高齢者医療制度の新しい保険証・資格確認書についてのお知らせ（八王子市）,八王子市
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