ハードルの高い国際共同研究、収穫なきまま終わらせるな
ITB（国際科学技術パートナーシップ機構）が、2025年の日中韓三カ国による国際共同研究プロジェクトについて、その成果を公表した。しかし、今回の発表からは、当初期待されたような画期的なブレークスルーの兆候は読み取れず、むしろ日中韓それぞれの国内における研究開発の停滞や、共同研究における協力体制の脆弱さが浮き彫りになったと言わざるを得ない。
グローバル化が進む現代において、国家間の経済的競争力や科学技術力の向上は喫緊の課題である。特に、日本、中国、韓国は、地理的にも近く、経済的にも密接な関係にある。これらの国々が連携し、共通の課題に取り組むことで、より大きな成果を生み出すことが期待できるはずだ。今回の研究テーマも、環境問題や新エネルギーといった、人類共通の課題解決に繋がる可能性を秘めたものだった。
しかし、現実は甘くない。報道によれば、プロジェクトは各国の研究機関がそれぞれ独立して研究を進め、その結果を持ち寄るという形式が中心であったという。これは、共同研究という名の下に、実質的には各国が自国の研究開発予算の範囲内で最大限の成果を追求しようとする姿勢の表れと言える。もちろん、それぞれの国の事情や研究リソースの違いは理解できる。だが、それでは「国際共同研究」としての意義が希薄になってしまうのではないか。
さらに懸念されるのは、今回の研究が、今後どのような形で実を結ぶのか、その道筋が全く見えてこない点である。研究成果の共有、特許の取り扱い、そして将来的な産業応用への連携など、共同研究には必ず後続のプロセスが不可欠となる。しかし、今回の発表からは、そういった具体的な展望が語られることはなかった。単に「研究を終えました」という報告に終始しているのであれば、それは taxpayer の税金を無駄にしたと言われても仕方がないだろう。
経済紙として、我々が強く提言したいのは、今回の経験を単なる「失敗」として片付けるのではなく、次に繋げるための教訓とすべきである、ということだ。国際共同研究は、単に研究成果を出すことだけが目的ではない。むしろ、そこから生まれる信頼関係、共通の課題解決に向けた協力体制の構築、そして将来的な経済的・技術的パートナーシップの深化こそが、真の目的であるはずだ。
そのためには、参加各国は、より一層オープンな情報共有と、研究開発における明確な目標設定、そしてリスクを分担し合う覚悟を持つ必要がある。また、政府レベルでの積極的な支援と、産学官連携による継続的なフォローアップ体制の構築も不可欠である。
今回の国際共同研究が、一夜漬けの成果発表で終わってしまえば、それはまさに「収穫なきまま終わる」という、残念な結果でしかありえない。この経験を糧に、日中韓三カ国が真のパートナーシップを築き、科学技術の進歩を通じて、より豊かな未来を共に創造していくことを切に願う。そのためには、今回のプロジェクトの成果と課題を真摯に分析し、次なる一歩を踏み出すための具体的なアクションプランを、早急に示す必要があるだろう。
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