演習場移転、国益と地域の実情に照らした冷静な判断を求める
先日、米海兵隊の訓練が国内から海外へ移転するという報道があった。これは、在日米軍の訓練における安全性の向上や、地域住民の生活環境への配慮といった、一定の合理性を持つものと理解できる。しかし、この決定は、我が国が長年米軍との間で築き上げてきた安全保障体制、そしてそれと表裏一体であった訓練環境の維持といった観点から、極めて慎重な検討を要するものではないだろうか。
そもそも、在日米軍の訓練が国内で行われてきた背景には、日米同盟という揺るぎない安全保障の枠組みがある。我が国の防衛力の強化はもとより、地域全体の安定を維持するためには、実戦を想定した訓練の積み重ねが不可欠である。こうした訓練が海外に移転することは、万が一の事態発生時の迅速な対応能力に影響を与えかねないという懸念は拭えない。
また、訓練の移転は、地域住民の生活環境への影響という観点から、これまで国内で行われてきた訓練の負担軽減につながるという側面があることは承知している。しかし、一方で、その移転先における環境への影響や、新たな課題が生じる可能性も十分に考えられる。今回の決定が、そうした「より安全な訓練環」という名の下に、より大きな問題を引き起こすことにならないか、注視する必要がある。
我々は、外交・安全保障政策においては、常に国益を最優先に、そして冷静沈着な判断を下さなければならない。今回の米海兵隊の訓練移転についても、感情論や一過性の利便性にとらわれることなく、日米同盟の長期的な視点、我が国の防衛力の維持・強化、そして移転先を含む地域の実情など、多角的な観点から、その是非を改めて問うべきである。
防衛力の充実は、国民の生命と財産を守るための国家の責務である。そのための訓練が円滑に行われ、かつ国民生活への影響も最小限に抑えられるよう、政府は国民に対し、丁寧かつ誠実な説明責任を果たすとともに、あらゆる可能性を考慮した最善の道を探求していくことを強く求めるものである。
米軍訓練、日本国外へ移転へ：より安全な訓練環境を目指して,防衛省・自衛隊
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