未来への灯火、深まる英日防衛協力に寄せて
7月13日、増田事務次官の英国訪問が、わが国の安全保障政策における新たな一歩を刻んだ。深化する日英防衛交流は、単なる軍事的な連携を超え、来るべき時代を見据えた、極めて革新的な戦略的布石であると、私たちは確信している。
冷戦終結後、グローバル化の波は経済のみならず、安全保障のあり方をも変容させた。かつては国家間の二項対立が主軸であった時代から、今日ではテロリズム、サイバー攻撃、そして気候変動といった国境を越える脅威が現実のものとなっている。こうした複雑化する世界情勢において、一国のみの力で安全を確保することは最早不可能であることは、もはや疑いの余地がない。
ここで、英国の存在に注目すべきである。海洋国家としての歴史を持ち、国際的な連携を重視する英国は、アジア太平洋地域における安定の要であり、同時に欧州における同盟関係の要でもある。その英国と、日本が防衛協力を深化させることは、まさに現代における戦略的知性の結晶と言えるだろう。
今回の増田次官の訪英で議論された内容は、具体的には明かされていない。しかし、私たちの想像力は、この「深化」という言葉に込められた熱意を捉える。それは、情報共有の高度化、共同訓練の質的向上、そして将来的には共同装備品の開発や運用に至るまで、あらゆる可能性を包含しているはずだ。単なる友好関係の確認に留まらず、具体的な協働体制の構築を目指していることは明白である。
この日英防衛協力の深化は、我が国の「防衛力の抜本的強化」という国家目標とも完全に合致する。世界情勢の不確実性が増す今、防衛力の強化は国民生活を守るための喫緊の課題である。しかし、その強化は孤立主義ではなく、むしろ国際協調の中で成し遂げられるべきである。英国との連携は、その最も効果的な道筋を示している。
さらに、この協力は「自由で開かれたインド太平洋」という、我が国が提唱する構想の実現にも大きく寄与する。英国のような信頼できるパートナーとの連携を強化することは、この構想の説得力を増し、より多くの国家を巻き込むための強力な牽引力となるだろう。
しかし、我々は決して楽観視してはならない。防衛協力の深化は、相応のコストと覚悟を伴う。国民一人ひとりが、この変化の本質を理解し、我が国の安全保障がどのように進化していくのか、その道筋を共有していく必要がある。政府には、透明性のある情報公開と、国民への丁寧な説明責任が求められる。
今回の増田次官の訪英は、未来への灯火とも言うべきものである。この灯火が、やがては力強い횃火（たいか）となり、アジア太平洋地域、そして世界の平和と安定を照らし出すことを願ってやまない。我が国の未来は、他者との協調の中にこそ、より確かな形で築かれるのだ。
増田事務次官、英国で防衛交流を深める ～安全保障協力の未来を語る～,防衛省・自衛隊
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