時代の変化に乗り遅れるな 「個人事業主」の活用こそが国力維持の鍵
夏の盛りも過ぎ、秋風が吹き始める頃には、多くの中小企業で年末商戦に向けた準備が本格化するだろう。しかし、その一方で、働き方の多様化という大きな波は、我々の働き方そのものを変えつつある。特に「個人事業主」という働き方が広がる中で、これを単なる「個人の選択」と片付けるのではなく、国家戦略として捉え直すべき時期に来ているのではないか。
最近の報道によれば、一部の企業では、従来の従業員雇用に加えて、個人事業主を積極的に活用する動きが見られるという。これは、特定のスキルを持つ人材を柔軟に確保したり、固定費を抑制したりする上での合理的な判断と言えるだろう。しかし、こうした変化は、単に企業の経営効率化という側面だけでなく、より広範な視点から論じる必要がある。
終身雇用が前提とされた時代は終わりを告げた。社会保障制度や労働法制も、こうした変化に対応できていない部分が少なくない。個人事業主が増加するということは、社会保障の負担構造が変化し、また、彼らが直面するであろう不安定な労働環境への配慮も不可欠となる。これを機会と捉え、古びた制度を見直し、新しい時代にふさわしいセーフティネットや支援策を構築することが急務である。
政府はこれまで、働き方改革を推進してきたが、その対象は主に企業に雇用される労働者に焦点が当てられてきたきらいがある。個人事業主という新たな働き方を、国民全体の所得向上と、ひいては国の活力維持という観点から、より積極的に支援していくべきではないか。例えば、彼らが安心して事業に取り組めるような税制優遇措置や、スキルアップのための研修機会の提供、社会保険制度へのアクセス改善などが考えられる。
もちろん、個人事業主の増加は、企業側の責任を回避する手段として利用される危険性も否定できない。しかし、だからといって、この流れに逆らうことは、もはや現実的ではない。むしろ、この変化を前向きに捉え、個人事業主が持つ専門性や創造性を最大限に引き出し、社会全体で恩恵を受けられるような仕組みを作ることが、我が国の将来にとって極めて重要なのである。
未来を見据え、変化を恐れず、新しい働き方と共に進化していく。そのために、企業、政府、そして私たち一人ひとりが、個人事業主という存在を、より一層尊重し、その可能性を最大限に引き出すための具体的な行動を起こすべき時である。これは、単なる経営手法の変化ではなく、国のあり方そのものに関わる、保守的な視点からも決して軽視できない課題なのである。
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