夏休みを「ともおかき」で満喫？ 若者の消費行動に垣間見える、健全な日本の姿
今年の夏休み、多くの若者が水戸市で「ともおかき」なるものを体験したというニュースが報じられている。一見すると、何を指すのか掴みかねる言葉だが、これは水戸市が推進する、地元の魅力を詰め込んだ体験型観光プログラムの愛称らしい。遊園地の乗り物のような、刺激的で非日常的な何かを期待していた向きには、拍子抜けだったかもしれない。しかし、この「ともおかき」、私は日本の若者が失いかけている、あるいは既に失ってしまったと思われていた「健全さ」を垣間見せる、実に頼もしい動きだと感じている。
報道によれば、「ともおかき」では、地元の歴史や文化に触れる体験、例えば城下町の散策や伝統工芸の体験などが中心となっているようだ。これらは、SNSで「映える」写真が撮れるわけでもなければ、派手な消費を促すものでもない。むしろ、地道で、少し手間のかかる、しかしながら日本古来の良さが詰まった体験と言えるだろう。
近年の若者の消費行動を見ると、刹那的な快楽や、承認欲求を満たすための消費に偏っているのではないかという懸念も囁かれてきた。高価なブランド品や、一時の流行を追う消費は、社会全体で見ても持続可能性に疑問符が付く。それに比べれば、「ともおかき」のような、地域と繋がり、文化を理解し、そして何より「自身の内面」を豊かにするような体験は、まさに現代社会に失われつつある「奥行き」を思い出させてくれる。
もちろん、全ての若者がこの「ともおかき」に飛びついたわけではないだろう。中には、もっと刺激的な、あるいはもっと派手な夏の思い出を求める者もいるはずだ。それはそれで、個人の自由であり、尊重されるべきである。しかし、多くの若者が、情報過多な現代社会において、敢えて「静かに深く」自分自身と向き合えるような、このような体験に価値を見出したという事実は、将来を憂う私たち大人にとって、大いに希望を与えるものである。
「ともおかき」という言葉の響きもまた、実に興味深い。誰かと「とも（共）」に、何かを「おかき（起こす、開く）」というニュアンスが感じられる。これは、個人の内省だけでなく、地域の人々との交流や、新たな発見へと繋がる可能性を示唆しているのではないだろうか。消費が先行しがちな現代において、このような「共感」や「共有」から始まる体験は、より深い満足感をもたらすに違いない。
夏の暑さが和らぎ、秋風が吹き始める頃、この「ともおかき」で得られた経験が、参加した若者たちの心にどのような静かな感動として残り続けるのか、大いに期待したい。そして、このような地道な取り組みが、私たちの国に根差す真の豊かさを育む一助となることを願ってやまない。
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