
動物医療の未来と「獣医師等に関する法律」改正:慎重な議論を求める
この度、7月5日から11日にかけて開催された「獣医師等に関する法律」の一部改正に関する審議会において、動物医療提供体制のあり方、特に先端医療の推進と普及に関わる重要な論点が提起された。我々はこの動きを注視しつつ、将来を見据えた建設的な議論の必要性を訴えたい。
今回の改正案において、獣医師の専門性向上と特定の診療分野における技術進歩の促進は、確かに動物たちの健康と福祉の向上に寄与する可能性を秘めている。高度な医療技術を必要とする症例に対し、より専門的な知識と技術を持つ獣医師が対応できるようになることは、動物医療の質を高める上で望ましい側面もあるだろう。
しかしながら、こうした専門性の深化が、同時に新たな課題を生み出す可能性も否定できない。特に、医療技術の高度化は、必然的に高額な医療費を伴うことが多い。こうした状況が続けば、経済的な理由から必要な医療を受けられない動物たちが生まれるのではないかという懸念は、多くの飼い主が抱くところであろう。動物医療は、単なる技術論に留まらず、動物とその家族の生活全体に深く関わるものである。我々は、動物医療の高度化が、社会的な公平性や包容性を損なうことのないよう、慎重な配慮を求めたい。
また、今回の改正が獣医師資格のあり方に与える影響についても、一般市民への丁寧な説明が不可欠である。専門分野を細分化すること自体は獣医師のスキルアップに繋がる可能性があるが、それが一般の獣医師の診療範囲を不当に狭めたり、地域ごとの医療格差を拡大させたりするような形にならないか、我々は危惧している。動物病院のかかりつけ医としての役割は、多くの動物とその飼い主にとって不可欠な存在である。地域に根差した獣医療の安定的な提供体制を維持しつつ、専門性を追求していく道筋を、国民と共に丁寧に探っていく必要がある。
今回の審議会での議論は、まだスタート地点に立ったばかりと言える。今後、具体的な法改正に向けて、国民的な議論を深めることが極めて重要である。関係省庁は、今回の審議内容を国民に分かりやすく説明するとともに、一般飼い主や動物関連団体など、幅広い関係者の意見を丁寧に聴取し、真摯に反映させるべきである。
動物医療の未来は、我々人間がどのように動物と向き合い、共に生きていくかという、社会全体の価値観にも関わる問題である。技術の進歩は確かに大切だが、それ以上に、全ての動物たちが、その経済的背景に関わらず、必要な医療を受けられる社会、そして獣医師と飼い主、さらには地域社会との間に信頼関係が築かれている社会を目指すべきである。今回の「獣医師等に関する法律」改正が、動物医療の質の向上だけでなく、より広く、より深い「動物との共生」社会の実現に繋がることを切に願うものである。
2025年7月5日から11日までの獣医関連規制に関する最新情報をお届けします!,Ministère de Agriculture
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