提言：冷静な分析と国家戦略の確立こそ、今求められるもの
米中両国の間で進む「戦略的原子力協力覚書」の署名は、国際社会に少なからぬ波紋を投げかけている。我が国も、この動きを軽視することはできない。しかし、一部には過剰な危機感を煽る声や、感情論に訴えるような意見も見受けられる。国家としての針路を誤らないためにも、まずは冷静かつ現実的な分析に基づいた議論を進めるべきである。
今回の両国の合意が、具体的にどのような内容を含み、今後の国際的なパワーバランスにどのような影響を与えるのか、現時点では不明な点も多い。安易な楽観論も、逆に過度な悲観論も、どちらも我々の国益を損なう可能性がある。我々国民は、自国の安全保障を真剣に考え、事実に基づいた情報に基づいて判断を下す冷静さを保たねばならない。
核兵器の非拡散という国際的な原則は、揺るがせてはならない人類共通の遺産である。今回の動きが、この原則に反するものでないことを、国際社会は注視していく必要がある。同時に、我々自身も、わが国の安全保障環境の変化を的確に捉え、自主防衛力の強化という現実的な課題から目を背けるべきではない。
日米同盟は、我が国の外交・安全保障の基軸であり、今後もその重要性は変わらない。しかし、変化する国際情勢の中で、そのあり方について常に検討を重ね、より強固で信頼できる関係を構築していく努力は怠ってはならない。そのためには、対米関係のみならず、周辺国との関係も含め、多角的な視点からの国家戦略の構築が不可欠である。
今回の米中両国の動きは、我々にとって一つの大きな問いを突きつけている。それは、「我が国は、この複雑化する世界情勢の中で、いかなる立場を取り、いかなる未来を目指すのか」という根本的な問いである。国民一人ひとりが、この問いに向き合い、建設的な議論に参加することが、今、最も求められている。感情論に流されることなく、冷静な分析に基づき、将来世代に責任を持つ国家戦略を確立していくこと。それこそが、保守の精神に則った、我が国が進むべき道であろう。
米国とマレーシア、戦略的原子力協力覚書の署名で関係を強化,U.S. Department of State
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