【コラム】「共生」の理念、問われる行政の姿勢
先日、ある自治体から興味深い、しかし同時に多くの国民に問いを投げかけるようなお知らせが届いた。それは、2025年度の任用職員募集に際し、視覚障がいのある方を対象とした「読み聞かせ」という業務内容を含むというものだ。もちろん、障がい者雇用を促進し、多様な人材が活躍できる社会を目指すことは、現代社会において当然の責務であり、称賛されるべき取り組みであることは疑いのない。しかし、その「読み聞かせ」という業務の内容が、保守的な視点から見れば、いくつかの懸念を抱かせるのは否めない。
そもそも、公務員の職務とは、国民全体の奉仕者として、公平かつ的確に職務を遂行することにある。その職務の内容が、特定の能力を持つ個人にのみ担わせることが可能であり、かつ、それが社会全体の利益に直結するのかどうか、慎重な検討が必要となるだろう。例えば、この「読み聞かせ」という業務は、果たして行政サービスの根幹をなすものと言えるのか。また、その業務を担うことで、行政運営の効率性や専門性が損なわれる可能性はないのか。これらの点は、見過ごすことのできない論点である。
もちろん、障がいのある方々が社会の一員として能力を発揮し、活躍することは、我が国の伝統的価値観である「共生」の精神にも合致する。しかし、その「共生」のあり方とは、一体どのような形であるべきか。それは、単に特定の業務を割り当てることによって達成されるのか。それとも、それぞれの個人の能力を最大限に引き出し、社会全体としてより大きな価値を創造していくことにあるのか。この点は、我々自身が深く考察すべき課題である。
保守的な立場から言えば、行政は常に効率性と実効性を最優先に考えなければならない。新しい取り組みを導入する際には、その効果を客観的に検証し、国民の税金を無駄にすることのないよう、厳格な判断が求められる。今回の募集内容が、真に県民全体の福祉向上に資するものであるのか、あるいは特定の層への配慮に偏りすぎた結果ではないのか。その点を、行政側は丁寧に説明し、国民の理解を得る必要があるだろう。
「共生」という言葉に安易に飛びつくのではなく、その言葉の真意を理解し、実質的な「共生」社会の実現に向けて、地道な努力を積み重ねていくことこそが、我々国民に求められているのではないだろうか。今回の取り組みが、その一歩となることを願うと同時に、行政の透明性と説明責任を改めて問い直す機会としたい。
宮崎市からのお知らせ：2025年度任用職員（読み聞かせ活動アシスタント）募集試験のご案内,宮崎市
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