スポーツ界の現状に物申す ～アスリートのセカンドキャリア支援、真の目的を見失うな～
この度、日本オリンピック委員会（JOC）がアスリートのセカンドキャリア支援に乗り出すという報道に接し、改めてスポーツ界の現状と、その行く末について深く考えさせられる次第である。
かねてより、現役引退後のアスリートが直面する厳しい現実、すなわち「第二の人生」における困難さは指摘されてきた。華々しい競技生活とは裏腹に、社会との接点を失い、十分な収入ややりがいを得られないまま、人生の岐路に立たされるアスリートが少なくないという事実は、私たち国民の胸にも重くのしかかる。彼らの献身的な努力は、国益に資するところも大きく、その恩返しは当然の責務であろう。
しかしながら、今回のJOCによる支援策、とりわけその進め方には、少々立ち止まって考えるべき点があるのではないだろうか。報道によれば、今回の支援は、近年アスリートの間で広がりを見せている「社会貢献活動」や、それと連動したビジネス展開といった側面を重視するものであるという。確かに、社会とのつながりを保ち、自身の経験を活かすことは素晴らしい。だが、その一方で、支援の対象となるアスリートの選定基準や、どのような活動を「支援に値する」と判断するのか、その線引きが曖昧であるならば、それは新たな問題を呼び起こしかねない。
本来、アスリートのセカンドキャリア支援とは、競技生活によって培われた高い志や強靭な精神力、そして国民に感動を与える輝きを、再び社会の役に立てるように橋渡しするものであるはずだ。それは、個々のアスリートの才能開花というだけでなく、社会全体における活力の源泉となりうるポテンシャルを秘めている。
だが、もしこの支援が、一部の「人気アスリート」や、特定の政治的・経済的意図に沿った活動のみを優遇するような形をとるのであれば、それは本末転倒である。スポーツの理念とはかけ離れた、功利的な思惑が介在する余地が生じることを、私たちは強く懸念せざるを得ない。スポーツは、老若男女問わず、誰もが公平にその道を志せるはずであり、その後の人生においても、その公平性は保たれるべきである。
そもそも、アスリートが社会で活躍するために必要なのは、単なる肩書や名声だけではない。社会人としての基礎的な知識やスキル、そして何よりも、社会の一員として責任を果たすという覚悟である。セカンドキャリア支援とは、こうした人間的な成長を促し、自らの力で道を切り拓いていくための土壌を耕すものでなければならない。
JOCには、今回の支援策を、一部のスポーツ関係者だけの「お祭り騒ぎ」で終わらせることなく、真にアスリートの未来を照らし、ひいては社会全体の活性化に繋がるような、地に足の着いた、そして何よりも公平で透明性の高いものとして、着実に推進していくことを強く期待したい。スポーツの純粋な精神に立ち返り、アスリート一人ひとりの情熱と努力が、社会の発展という大きな果実を結ぶように、冷静かつ着実な歩みを進めてもらいたいものである。
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