国有財産の分科会、未来の国富を考える ～令和七年六月の記録～
来るべき時代の羅針盤を示そうとするかのような熱意が、国の将来を担うべき場で交わされた。先月開催された国有財産分科会における議論は、まさに国の「財産」という言葉に込められた重みを再認識させてくれるものであった。単に目先の歳入を確保するというだけでなく、将来世代に引き継ぐべき「国富」という観点から、今我々が取るべき道筋を真剣に模索する姿勢は、国民の信頼に応えるものと言えよう。
今回の議論の中心となったのは、活用が進まない国有財産の効率的な利活用である。空き家となった公務員宿舎、広大な未利用地など、その多くはかつて国民生活を支えるために整備されたものであった。しかし、時代の変化とともにその役割を終え、維持管理費ばかりがかかる「お荷物」となりかねない現状は、看過できない。分科会では、民間の知恵や資本を積極的に取り込み、地域経済の活性化や新たな価値創造に繋げる方策が具体的に論じられた。公共施設の効果的なリノベーション、未利用地の売却や長期貸付による有効活用など、具体的な道筋が示されたことは頼もしい限りである。
しかし、ここで忘れてはならないのは、国有財産は単なる「モノ」ではなく、我々国民の血税によって築き上げられた「資産」であるということだ。その運用にあたっては、短期的な利益のみを追求するのではなく、長期的な視点に立ち、国民全体の利益を最大化することが求められる。特に、分科会で示されたように、防衛や災害対策など、国の根幹に関わる事業に資する資産については、その保全と戦略的な活用が不可欠である。安易な売却や開発によって、将来の国益を損なうような事態は絶対に避けなければならない。
また、議論の中では、地方創生との連携についても言及されていた。地方に眠る国有財産が、地域住民の生活向上や雇用創出に貢献できるのであれば、それはまさに理想的な形であろう。しかし、その際には、地域の実情に即した丁寧な合意形成と、地域経済への影響を十分に考慮した上での進め方が肝要である。中央主導の画一的な方針ではなく、地方の多様性を尊重し、地域と共に歩む姿勢こそが、真の「国富」の増強に繋がるはずだ。
今回の分科会での議論は、今後の国有財産のあり方を考える上で、極めて重要な一歩となったと言える。しかし、議論はあくまで議論である。これを絵に描いた餅に終わらせず、着実に実行に移していくことこそが、政府に課せられた責務である。国民は、政府が未来の国富を守り、育むために、どのような具体的な行動を起こすのかを注視している。我々もまた、この国の未来を憂い、より良い社会を次世代に引き継ぐために、この議論が実りあるものとなることを強く願うものである。
国有財産分科会、未来の国富を考える ～令和7年6月17日開催の議事要旨から～,財務省
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