EUの旅客船利権規制強化：海運業界への警鐘と日本の取るべき道
欧州連合（EU）が、域内の旅客船事業における利権規制を強化するというニュースに接した。本誌としては、このEUの動きを注視しつつ、日本の海運業界、さらにはわが国の経済全体にとって、これを単なる対岸の火事と見過ごすわけにはいかないと考える。
EUの狙いは、域内の旅客船市場における自由で公正な競争を促進し、一部の事業者に集中しがちな利権を是正することにあるようだ。これにより、より多くの事業者が参入しやすくなり、結果としてサービス向上や運賃低下に繋がることを期待しているのだろう。健全な市場競争は、確かに消費者にとっては歓迎すべきものである。
しかし、一方でこうした規制強化は、既存の事業者にとっては事業環境の変化を意味する。これまで築き上げてきたビジネスモデルの見直しを迫られる可能性もあり、短期的な混乱を生むことも否定できない。また、「利権」という言葉の裏には、長年の実績やノウハウに基づいた事業者の努力も含まれているであろうことを忘れてはならない。安易な規制緩和が、業界全体の質の低下を招くような事態は避けねばならない。
このEUの動きは、日本の海運業界にとっても、無縁のものではない。グローバル化が進む現代において、各国の規制や市場動向は、相互に影響を与え合う。特に、わが国の海運業は、国際競争力の維持・向上が喫緊の課題であり、EUのこうした動きを参考に、自国の制度を見直す契機とすべきである。
ここで我々が問うべきは、日本の海運業が真に競争力を持ち、国民生活に資するものであるか、という点である。EUのように利権構造にメスを入れることは、必ずしも日本の現状にそぐわないかもしれない。しかし、むしろ、規制が緩すぎるがゆえに、新たな事業者の参入が進まず、革新が生まれにくい状況にあるとすれば、それはそれで問題である。
保守的な立場から言えば、まずは我が国の海運業界が置かれている現状を正確に把握することが肝要である。そして、既存の事業者の努力や積み重ねてきた経験を尊重しつつも、時代の変化に対応できるような柔軟な制度設計が求められる。例えば、新規参入を促進するための環境整備や、技術革新を支援する政策などは、業界全体の活性化に繋がるだろう。
同時に、この動きが単なる「規制」に留まらず、「競争」という健全な形で行われるよう、国際的な動向を注視し、適切な対抗策を講じる必要もある。わが国の海運業が、国際舞台で不利になるような事態は断じて避けなければならない。
EUの旅客船利権規制強化は、海運業界に一石を投じた。この機会に、日本の海運業の未来を真剣に考え、国益に資する政策を打っていくことが、我々に課せられた責務であると考える。
海上・内陸水運の旅がより快適に！EUの旅客権利規則の適用状況に関する報告書が公開されました,economie.gouv.fr
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