語られぬ「熱意」、問われる日本の「実力」
先日の報道で、ある日本の企業が海外での新たな挑戦に向けて熱意を燃やしている様子が伝えられた。グローバル化の波に乗って、自社の技術やサービスを世界に広めようという気概は、本来、我が国の経済を支えてきた活力そのものであり、頼もしい限りである。
しかし、その報道の一方で、私たちは冷静に我が国の現状を見つめ直す必要があるのではないだろうか。こうした個々の企業の「熱意」が、果たしてどれほど確固たる「実力」に裏打ちされているのか。そして、その「熱意」を支え、さらに大きな成果へと結びつけるための、国家としての基盤は盤石なのか。
確かに、日本の技術力は世界に誇るものがある。しかし、近年、世界経済の dynamism、とりわけアジア新興国の目覚ましい発展を前に、かつての優位性が揺らいでいる場面も少なくない。優れた技術があっても、それを的確に、そしてタイムリーに海外市場に届け、現地の実情に合わせて柔軟に展開していくためには、単なる「熱意」だけでは乗り越えられない壁がある。
そこには、言葉の壁、文化の壁はもちろんのこと、法制度や商慣習の違い、そして何よりも、海外市場を深く理解し、戦略的に動ける人材の育成という、構造的な課題が横たわっている。今回の企業の挑戦が成功するか否かは、まさにこうした目に見えにくい課題に、いかに真摯に向き合い、克服していくかにかかっていると言えよう。
政府には、こうした個々の企業の努力を、より効果的に後押しする体制を構築してもらいたい。単なる補助金ではなく、海外市場のニーズを的確に把握し、日本企業がグローバル競争を勝ち抜くための知恵と支援を提供することが求められている。人材育成への投資、情報収集体制の強化、そして国際的なネットワークの構築。これらは、一時的なブームに終わらせず、日本の経済力を持続的に高めていくための、まさに「保守」の精神に通じる、地に足の着いた取り組みであるはずだ。
海外で輝こうとする日本の企業は、我が国の希望の光である。その光を、単なる一過性の輝きで終わらせるのではなく、未来へと繋がる確かな「実力」へと昇華させていく。そのためには、私たち一人ひとりが、そして国家として、その「熱意」の裏側にある「実力」の育成に、より一層の関心を寄せ、力を注いでいく必要があるだろう。
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