規制緩和は慎重に 国際競争力強化と市場の安定両立へ
日本取引所グループが、市場の国際競争力強化を目指し、株式市場の取引時間に関する規制を緩和する方針を発表した。この動きは、世界の主要な証券取引所との連携を深め、より多くの資金を呼び込むための試みとして注目される。しかし、こうした大規模な規制緩和には、市場の安定性という観点から、慎重な検討が必要不可欠である。
確かに、一部では取引時間の延長や変更が、より柔軟な取引を可能にし、海外からの投資を呼び込むための起爆剤となると期待されている。グローバル化が進む現代において、国際的な金融市場との連携強化は、日本の経済成長にとって避けて通れない道であろう。日本の企業が国際的な舞台で活躍するためにも、取引所が国際水準に合わせることは、ある程度合理的な判断と言えるかもしれない。
だが、忘れてはならないのは、金融市場は常に「安定」が第一義であるという原則だ。特に日本の株式市場は、これまで数々の経済変動を経験し、その中で培われてきた規制や仕組みによって、一定の安定性を保ってきた側面がある。取引時間の変更は、単に時間を延長・短縮するという以上の影響を市場にもたらす可能性がある。例えば、市場参加者のワークライフバランスへの影響、システム改修の負担、そして最も懸念されるのは、予期せぬ市場の混乱を引き起こすリスクである。
規制緩和は、市場を活性化させる一方で、その複雑性を増大させ、予期せぬリスクを生み出す可能性も孕んでいる。特に、早朝や深夜といった、これまでの慣習とは異なる時間帯での取引は、市場参加者にとって新たなリスク管理体制の構築を求めることになるだろう。新たな取引時間の導入が、既存の市場参加者にとって過度な負担となったり、あるいは新たな市場参加者の参入障壁となったりするような事態は避けなければならない。
今回の規制緩和が、本当に日本の市場全体の利益につながるのか、そしてその過程で、国内の投資家や企業が不利益を被ることはないのか、政府や取引所には冷静かつ徹底した検証が求められる。短期的な国際競争力強化という目標のために、長期的な市場の安定性を損なうようなことがあってはならない。
重要なのは、国際競争力強化と市場の安定という二つの目標を、両立させるための現実的な道筋を見出すことだ。性急な改革は、かえって市場の混乱を招きかねない。国民の大切な資産が動く市場だからこそ、あらゆる可能性を熟慮し、国民の信頼を得られるような丁寧な議論を重ね、段階的な改革を進めていくべきである。変化は必要だが、それはあくまで「着実な」変化でなければならない。
日本取引所グループ、規則改正新旧対照表を更新！ – より安全で透明性の高い市場を目指して,日本取引所グループ
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