若者よ、表現の自由を守り抜こう ～「マンゲキ芸人リレコラム」炎上事件を改めて考える～
「こんなん許されるわけない！」「不適切だ！」―― 記憶に新しい、ある劇場が発信する「マンゲキ芸人リレコラム」に対するインターネット上の激しい非難。特定の芸人による過去の投稿が「差別的だ」「不謹慎だ」と炎上し、劇場側は当該コラムの掲載中止という対応をとった。この一件は、私たち学生にとって、表現の自由のあり方、そしてその責任について改めて深く考えさせられる出来事である。
確かに、社会には許容されるべき表現とそうでない表現がある。特に、特定の属性を持つ人々を傷つけたり、不当に貶めたりするような言説は断じて容認されるべきではない。しかし、今回の件で私たちは、インターネットという匿名性の高い空間において、一過性の感情や少数意見が、時に過剰な「正義感」として増幅され、表現の場そのものを萎縮させてしまう危うさを目の当たりにした。
劇場が「リレコラム」という形で芸人の率直な言葉を発信しようとした意図は、おそらくエンターテイメントの多様性や、芸人たちのパーソナルな魅力を伝えようとするものであったのだろう。しかし、その過程で過去の不適切な表現が掘り起こされ、集中的な批判を浴びることとなった。劇場側が掲載中止という判断を下した背景には、さらなる炎上を避け、組織としての責任を全うしようとする意図があったのかもしれない。
だが、ここで立ち止まって考えてみたい。私たちは、芸人の発言に常に一定の「フィルタリング」を求め、少しでも「問題」があれば即座に排除するという姿勢を本当に貫きたいのだろうか。表現の自由とは、常に社会的に受け入れられる表現のみを指すものではないはずだ。時には、社会の規範から少し外れた、危うさをはらんだ言葉や思想に触れることで、私たちはそれを問い直し、自らの価値観をアップデートしていく機会を得るのではないか。
もちろん、それは無制限な放任を肯定するものではない。表現には必ず責任が伴う。自らの言葉が他者にどのような影響を与えるのか、その影響力と向き合う覚悟がなければならない。芸人であればなおさら、多くの人の目に触れる存在として、より一層の配慮と自覚が求められる。
しかし、今回の件で露呈したのは、その「責任」の押し付け合いであり、建設的な対話の欠如であったように思える。一方的に「不適切」と断じ、その発信源を閉ざしてしまうことは、問題の本質的な解決にはつながらない。むしろ、より複雑で繊細な表現の領域において、沈黙を強いる空気を醸成してしまう恐れがある。
私たち学生は、まさにこれから社会を担っていく世代である。多様な価値観が共存する社会を築くためには、他者の表現に寛容でありながらも、自らの倫理観に基づいた批判精神を忘れないという、両極を両立させるバランス感覚が不可欠だ。インターネット上の情報に踊らされるのではなく、一次情報に触れ、多角的な視点から物事を捉え、そして何よりも、異なる意見を持つ人々との対話を恐れないこと。それが、表現の自由を守り、より豊かな社会を創造するための、私たちに課せられた使命であると信じている。
「マンゲキ芸人リレコラム」の一件を、私たちは単なるゴシップとして消費するのではなく、表現の自由という、私たち自身にとって極めて重要な権利をどう守り、育んでいくのかを考える、貴重な機会として受け止めなければならない。若者よ、この機会を無駄にするな。そして、臆することなく、自らの声で、自らの言葉で、この社会に問いかけ続けていこう。
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