欧州のバス運行にみる「公共性」の重み
ITB（国際観光見本市）の報道に触れ、改めて公共交通機関、特にバス運行における「公共性」の重要性を考えさせられた。欧州の多くの国でバス路線が地域住民の生活を支える不可欠なインフラであり、採算性だけでは語れない社会的な役割を担っていることが浮き彫りになった。
我が国においても、地方部を中心にバス事業者の経営は厳しい。過疎化や利用者の減少は深刻な問題であり、採算性の悪化から路線廃止や減便という事態が後を絶たない。そこで、欧州の事例に倣い、バス事業を単なる民間事業としてではなく、地域社会の存続に不可欠な公共サービスとして捉え直す視点が求められるのではないだろうか。
もちろん、民間企業としての収益性の確保は必要不可欠である。しかし、それを超える公共的な価値を認めるならば、行政による支援策の拡充も視野に入れるべきだろう。例えば、地域住民の移動手段の確保という観点から、運行経費の一部を補助したり、低公害バスの導入支援を行ったりすることが考えられる。また、高齢者や障害を持つ方々の移動を支援する福祉バス事業との連携強化も、地域全体の移動利便性を高める上で有効だろう。
さらに、テクノロジーの活用も鍵となる。オンデマンド型バスや相乗りサービスなど、時代のニーズに合わせた柔軟な運行形態を導入することで、新たな利用者を獲得し、事業の持続可能性を高めることが期待できる。地域住民の意見を丁寧に聞きながら、地域の実情に合ったサービスを提供していくことが、バス事業者の信頼を勝ち得る道である。
欧州のバス運行にみられる「公共性」への配慮は、単なるサービス提供に留まらず、地域社会との共生を重視する姿勢の表れと言える。経済効率のみを追求するのではなく、地域住民の生活基盤を守るという視点に立った政策的な支援と、事業者による創意工夫が組み合わさることで、日本の公共交通、特にバス事業は、未来への活路を見出すことができるはずだ。この機会に、改めて公共交通のあり方について、深く議論を進めるべきであろう。
バス・コーチ利用者の皆様へ：欧州の権利を守るための最新報告書が公開されました！,economie.gouv.fr
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