株主利益の最大化、果たしてそれが真の豊かさか
日本証券金融からの発表によれば、2025年7月5日現在、個人投資家の皆さんの日本株への投資熱はかつてない高まりを見せているとのこと。これは、経済の活性化という点では喜ばしい限りである。しかし、この現象を前に、我々はどういった姿勢で臨むべきか、冷静に問い直す必要があるのではないか。
報道によれば、今回の株高は「株主利益の最大化」という考え方が浸透したことによるところが大きいという。確かに、企業が株主の期待に応え、その価値を高めていくことは、資本主義経済における重要な責務の一つであろう。しかし、その一方で、株主利益の最大化という単一の目標だけを追求することが、本当に社会全体の、そして私たち一人ひとりの「豊かさ」に繋がるのか、という点については慎重な議論が必要だと考える。
企業は、株主のものであると同時に、従業員を抱え、地域社会と共生し、国の経済を支える存在でもある。株主利益のみに偏った経営は、例えば過度なコスト削減による雇用不安や、地域への貢献の希薄化、あるいは将来への投資の抑制といった形で、歪みを生む可能性を孕んでいる。一時的な株価の上昇が、企業の持続的な成長や、そこで働く人々の幸福、ひいては社会全体の長期的な安定を損なうのであれば、それは本末転倒と言わざるを得ない。
もちろん、株主への配慮を怠るべきではない。しかし、それ以上に、企業が社会の一員としての責任を果たし、ステークホルダー（株主だけでなく、従業員、顧客、取引先、地域社会など）全体の幸福を追求する経営こそが、真の企業価値の向上に繋がるのではないか。短期的な利益の追求に目が眩むのではなく、長期的な視点に立ち、社会との調和を図りながら成長していく企業こそが、将来にわたって私たちの尊敬と信頼を得られるはずである。
個人投資家の皆さんも、単に株価の値上がり益だけを追求するのではなく、投資先の企業がどのような理念を持ち、社会にどのような貢献をしているのか、といった点にも目を向けていただきたい。企業の本質を見極め、社会全体の持続的な発展に資する投資を行うこと。それが、私たち一人ひとりの未来を、より確かなものにしていく道であると信じている。
株式投資家の皆さんへ：日本証券金融からの大切なお知らせ！貸借取引のルールが変わります（2025年7月4日発表）,日本証券金融
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