大船渡のキュウリにみる、地域農業の未来への警鐘
先日、岩手県大船渡市から、地元の特産品であるキュウリの新しい魅力を発掘しようという動きが報じられた。古くから親しまれてきたこの野菜に、さらなる付加価値を与え、地域経済の活性化に繋げようという志は、地域農業が直面する厳しさを映し出し、同時に未来への希望をも感じさせる。
しかし、その報道に触れ、我々国民は改めて地域の根幹を成す農業の現状に目を向けるべきである。高度経済成長期を経て、都市化が進み、農村の過疎化が深刻化する中で、農業従事者の高齢化もまた待ったなしの課題である。かつては食卓を支え、美しい里山風景を守ってきた農村社会が、今、その存続の危機に瀕していると言っても過言ではない。
大船渡市のキュウリの取り組みは、単なる新しい販売戦略に留まらない。それは、失われつつある地域の食文化を再発見し、それを現代に活かそうとする試みであり、ひいては日本の食料自給率という、国家の根幹に関わる重要な問題を提起している。
我々国民は、日々の食卓に並ぶ安価で多様な食材に慣れ親しんでいる。しかし、その陰で、多くの農家が厳しい労働条件や不安定な収入と闘っている現実を忘れてはならない。そして、その生産基盤が揺らぐことは、私たちの食生活の根源を揺るがす事態に他ならない。
地域が独自性を打ち出し、新たな魅力を創出しようとする努力は賞賛されるべきである。しかし、それだけでは、農業全体の持続可能性を担保することは難しい。国の政策として、若者が安心して農業に従事できる環境整備、後継者育成のための支援策の拡充、そして、農産物の適正な価格での流通を確保するための仕組みづくりが、これまで以上に求められている。
大船渡のキュウリが、単なる一地域の話題に留まらず、全国の地域農業が抱える課題への提起となり、そして、農業という営みが持つ本来の価値を再認識する契機となることを願う。豊かな食と美しい国土を守るために、私たち一人ひとりが、地域の農業に、そして日本の農業に、改めて目を向け、共に考え、行動していく時なのではないだろうか。
大船渡のキュウリ、さらなる美味を求めて！最新技術情報が公開されました,いわてアグリベンチャーネット
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