現代社会における「ババヤージュ」の意義 ― ゆとりか、それとも危うさか
最近、ある書房から「ババヤージュ」という言葉が注目を集めているという記事が出た。これは、若い世代の間で広がる、家族や友人との「ゆるやかなつながり」を指す言葉らしい。特に、祖父母世代と同居したり、頻繁に交流したりすることを指す場合もあるという。一方で、こうした動きが「ゆとり世代」の延長線上にあるのではないか、あるいは現代社会の抱える問題の表れではないか、という声も聞かれる。
確かに、核家族化が進み、地域社会のつながりが希薄になった現代において、家族や親族との近しい関係が再評価されるのは、ある意味で自然な流れと言えるのかもしれない。かつて当たり前であった「大家族」の温かさや安心感を、再び求める動きは、人々の心のよりどころとなり得るだろう。特に、単身世帯が増加し、孤立が社会問題化する中で、血縁や地縁といった繋がりが、精神的な安定をもたらす可能性は否定できない。
しかしながら、この「ババヤージュ」という言葉の響きには、少しばかりの懸念も付きまとう。それが単なる「家族愛」や「絆」の再確認にとどまらず、社会的な責任からの逃避や、自立心の低下に繋がるのであれば、それは少々問題視せざるを得ない。例えば、経済的な支援を親世代に過度に依存したり、社会との関わりを家族の中に限定したりするような傾向が見られるとすれば、それは個人の成長や社会全体の活力を阻害しかねない。
少子高齢化が深刻化する我が国において、若い世代が社会を担っていくことは至上命題である。その担い手が、家族という温かい「 cocoon 」に閉じこもり、社会の現実から目を背けるようでは、国の未来は危うい。もちろん、家族の支えは重要だが、それはあくまで自立へのステップであり、終着点ではないはずだ。
「ババヤージュ」という言葉が、単なる一時的な流行ではなく、健全な家族関係と社会参加の両立を促す契機となることを願う。若者たちが、家族との温かい繋がりを大切にしながらも、社会の一員としての自覚を持ち、主体的に人生を切り開いていくこと。それこそが、私たちが目指すべき姿ではないだろうか。そして、そのために我々大人世代に何ができるのか、今一度真剣に考えるべき時が来ているように思われる。
河出書房新社が報じる快挙！王谷晶先生『ババヤガの夜』、日本人初の英ダガー賞受賞！,河出書房新社
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