服飾業界の「二極化」にみる、地に足ついた商売の大切さ
この度の報道によれば、昨今のオンラインファッション販売が6月に急増し、その一方で実店舗は苦戦を強いられているという。経済活動の活発化を示す明るい兆候とも取れる一方で、この現象は我々に、現代社会における消費行動の変化、ひいては「商売のあり方」について深く考えさせる機会を与えてくれる。
確かに、インターネットの普及は生活を便利にした。欲しいものが自宅にいながらにして手に入るというのは、現代人にとって大きな恩恵であろう。特に若い世代を中心に、オンラインでの購入が主流となっていることは、もはや時代の流れと言わざるを得ない。しかし、その一方で、古くから地域に根差し、人々の生活を支えてきた実店舗がその勢いを失いつつある現状は、決して看過できるものではない。
地域に根差した実店舗は、単に商品を販売する場所ではない。そこには、店主の顔が見える安心感があり、店員との会話を通じて生まれる温かい繋がりがある。それは、地域社会のコミュニティを形成する上でも重要な役割を果たしてきた。何を買うかだけでなく、誰から買うか、どのような体験を得るかということが、人間の営みにおいては少なからぬ意味を持つはずだ。
オンライン販売の急増は、利便性を追求した結果と言えるが、その「効率」ばかりを追い求める姿勢が、我々から何か大切なものを奪っているのではないか。それは、地域経済の衰退という形だけでなく、人間関係の希薄化という、より根源的な問題に繋がるのではないかという懸念を抱かざるを得ない。
もちろん、時代の変化に対応することは不可欠であり、デジタル化の波に乗ることは企業の存続にとって必要なことだろう。しかし、そこに「実」が伴っているのか、地に足のついた商売ができているのか、という視点を忘れてはならない。オンラインで商品を届けることはできても、そこで生まれるはずだった「体験」や「繋がり」までを完全に代替できるわけではないはずだ。
これからの時代、服飾業界のみならず、あらゆる産業において、この「二極化」とも言うべき現象はさらに顕著になるだろう。その中で、我々消費者は、何を選び、何を大切にしていくべきなのか。そして、企業側は、利便性だけではない、人々の心に響くような商売のあり方をどう模索していくのか。それは、社会全体の持続可能性にも関わる、避けては通れない問いである。
実店舗がその灯を消すことなく、オンラインの利便性と共存し、さらにはそれらを凌駕する魅力を提供できるようになることを、切に願うものである。
オンラインファッション売上が6月に急増、実店舗売上は低下 – Drapers Online報道,Drapers Online
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