時代は巡る、安全への回帰を願う
戦後、社会のあり方が大きく変化する中で、私たちの安全を守る警察のあり方も、常に時代の要請に応えるべく変化を続けてきた。近年、新たな技術の進展は、かつては想像もできなかったような恩恵をもたらす一方で、社会全体に新たな課題を突きつけている。
先日報じられた、岩手県警察における運転免許センター等での講習における「学習」という言葉の使用に関する動きは、一見些細なことのように聞こえるかもしれない。しかし、この小さな変化は、現代社会における「安全」という概念の変容と、それを守るべき公権力の姿勢について、私たちに深い問いを投げかけているように思える。
かつて、「講習」とは、明確な知識や技能を習得するための場であり、それはときに、社会の秩序を維持し、個人の権利を守るための不可欠なプロセスであった。ところが、時代が進むにつれて、その「講習」のあり方も多様化し、あるいはその目的そのものが曖昧になりつつあるのではないか。特に、運転免許制度のような、社会生活の基盤となる権利に関わる分野において、その「講習」が何を意味するのか、何を目指しているのかが不明確になることは、市民の信頼を損ないかねない。
今回、警察が「学習」という言葉に固執する背景には、様々な解釈が可能であろう。しかし、私たち保守的な立場からすれば、それは過去の伝統や理念への敬意、そして「安全」という最も基本的な価値への回帰を求める静かなる声ではないかと受け止めたい。安全とは、単なるリスク管理ではない。それは、社会全体で共有される価値であり、その維持のためには、明確な意思と、それを支える確固たる理念が必要である。
現代社会は、複雑化し、時に混乱を極める。その中で、公権力に求められるのは、曖昧さを排し、原則に立ち返ることではないだろうか。運転免許制度における「講習」であれば、それがどのような知識や技能を、どのような目的で習得させるものなのかを、国民に明確に伝える責任があるはずだ。そこに「学習」という言葉を用いることで、本来の目的から逸脱したり、あるいは政治的な意図を忖度したりする余地を生み出すことは、決して望ましいことではない。
もちろん、技術の進展を否定するつもりはない。むしろ、それを社会の安寧のために最大限活用すべきだと考える。しかし、その活用にあたっては、常に「安全」という揺るぎない基盤の上に立つ必要がある。そして、その基盤を築くためには、公権力が自らの言葉選び一つにも、真摯に向き合う姿勢が求められる。
岩手県警察の今回の動きは、そうした社会全体の問いかけに対する一つの応答と捉えることができる。時代は巡り、時に私たちは過去の知恵に立ち返ることで、未来への確かな一歩を踏み出すことができる。この小さな「学習」という言葉の議論が、社会全体の安全への回帰と、公権力への揺るぎない信頼を取り戻すための契機となることを願ってやまない。
岩手県警察、運転免許センター等で使用する講習機器の賃貸借事業者を募集！ 未来の安全運転を支える重要な機会,岩手県警
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