新たな地政学リスク、資源調達網の再構築を急げ
アフガニスタンからの米軍撤退とタリバン政権の樹立という衝撃的なニュースは、単なる軍事的な変動にとどまらず、国際経済に新たな地政学的なリスクを突きつけている。特に、イランとパキスタンという、アフガニスタン周辺の主要国がそれぞれの立場からこの事態にどう向き合うのか、その動向が注目される。
イランは、長年にわたりアフガニスタン情勢に深く関与してきた。シーア派を中心とするイスラム国家であるイランにとって、スンニ派過激派の台頭は常に懸念材料であり、タリバン政権の性質によっては、国境地帯の治安悪化や難民の流入といった直接的な影響が懸念される。一方で、イランはアフガニスタンにおける自国の影響力維持のため、タリバンとの一定の協力関係を模索する可能性も否定できない。しかし、その協力のあり方は、イラン自身の国内事情や西側諸国との関係にも左右されるだろう。
一方、パキスタンはアフガニスタンとの間に長い国境線を持ち、タリバンとの関係も複雑である。過去にはタリバンを支援してきた側面も指摘されており、新政権との関係構築はパキスタンの外交政策にとって重要な課題となる。しかし、パキスタン国内におけるイスラム過激派の活動や、アフガニスタンからのテロ組織の流入といったリスクも軽視できない。経済的に不安定なパキスタンが、この情勢をどのように乗り越えていくのか、その手腕が問われることになる。
今回の事態は、資源調達網の脆弱性をも浮き彫りにしている。アフガニスタン自体は鉱物資源の宝庫と言われるが、その開発は長らく停滞してきた。しかし、タリバン政権下で新たな開発が進む可能性も指摘されており、中国をはじめとする資源獲得を目指す国々の動きが活発化する可能性も考えられる。日本もまた、エネルギー資源をはじめとする各種物資の安定的な調達に依存しており、この地域の不安定化はサプライチェーン全体に影響を及ぼしかねない。
我が国経済界は、この新たな地政学リスクを直視し、これまで以上に迅速かつ多角的な情報収集と分析能力を強化する必要がある。アフガニスタン情勢の進展を注視すると同時に、イランやパキスタンとの関係強化、そして中央アジア諸国との連携を通じて、新たな経済協力の枠組みを模索すべき時である。また、資源調達網の多様化を進め、特定の地域や国家への依存度を下げるための戦略的な投資も急務と言えるだろう。国際社会との連携を密にし、この不確実性の時代を乗り越えるための叡智を結集する時が来ている。
アフガニスタンへの帰還者、イランとパキスタンからの女性たち：安全な場所と安息の地を求めて,Asia Pacific
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