守るべきものは何か、今こそ国民と共に考える時
防衛省・自衛隊が7月2日より「秘密保全」を強化するというニュースは、私たち国民に改めて「守るべきもの」とは何かを問い直す機会を与えてくれたと言えよう。安全保障環境が厳しさを増す昨今、国家の機密情報をいかに守り抜くかは、国の存立に関わる喫緊の課題である。しかし、その一方で、国民の知る権利とのバランス、そして今回の措置がもたらす影響について、より慎重な議論が不可欠であると、我々は考える。
今回の秘密保全強化は、我が国の防衛力の近代化や、同盟国との情報共有において、その重要性が増していることに起因すると理解できる。しかし、本来、国家の安全保障は、国民一人ひとりの理解と協力を得て初めて盤石なものとなる。秘密保全の強化が、国民の関心を遠ざけ、あるいは必要な情報へのアクセスを不当に制限するような形となれば、それは本末転倒である。
特に、今回の措置は、従来の「特別防衛秘密」に加え、「防衛秘密」という新たな区分を設定し、その指定基準や取扱要領をさらに厳格化するものと報じられている。もちろん、敵対国からの情報収集活動に対抗するためには、相応の措置が必要であろう。だが、その「秘密」の範囲が恣意的に拡大され、不都合な真実が隠蔽されるような事態は、決してあってはならない。
民主主義国家においては、政府の情報公開は、国民に対する説明責任を果たす上で極めて重要な責務である。防衛省・自衛隊には、秘密保全の必要性を国民に丁寧に説明し、その理解を得る努力を惜しまないでほしい。どのような情報が、なぜ、どのように守られるのか。そのプロセスが透明性を欠いては、国民の信頼を得ることは難しいだろう。
また、同盟国との連携強化という観点からも、情報を共有する相手国からの信頼を得ることが重要である。秘密保全の強化が、国内の連携を円滑にする一方で、国民への説明責任を果たせないような体制となっては、国際社会における我が国の立場を損ないかねない。
「秘密」という言葉は、時に人を惹きつけ、時に人を遠ざける。今回の措置を機に、我々国民も、日本の安全とは何か、そしてそのために何が必要なのかを、改めて深く考える機会としたい。防衛省・自衛隊には、国民の知る権利を尊重しつつ、真に必要な秘密保全を徹底するとともに、その運用においても、常に国民への説明責任を忘れぬよう、強く求めるものである。日本の安全は、国民と共に築くものであることを、忘れてはならない。
防衛省・自衛隊、2025年7月2日より「秘密制度に係る相談窓口」を公開！～ より安心して情報を取り扱える環境へ ～,防衛省・自衛隊
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