若者の「学び」への熱意、学問の府の責務を問う
学問の府である大学が、その門戸をさらに開け放とうとしている。この度、鳥取大学が一般公開する「サイエンス・アカデミーvol.564」はその象徴的な出来事と言えるだろう。専門的な知識や最先端の研究成果を、地域社会はもとより広く一般へと還元しようとする姿勢は、教育機関としての責務を果たす上で、評価に値する取り組みである。
しかし、こうした開放的な姿勢を歓迎する一方で、我々は学問の本来あるべき姿、そして大学が担うべき根本的な役割について、改めて襟を正して考える必要がある。特に、昨今の教育界全体に見られる「わかりやすさ」や「実用性」ばかりを重視する風潮は、時に学問の本質を見失わせかねない危惧を抱かせる。
サイエンス・アカデミーがどのような内容で構成されるのかは、現時点では詳細を把握しきれていない。もしそれが、最新の科学技術の紹介に留まり、その背後にある哲学や歴史、さらには倫理的な側面への深い洞察を伴わないものであれば、それは単なる情報の消費に過ぎないかもしれない。学問とは、単に知識を詰め込むことではなく、物事を深く考察し、自らの頭で考え抜く力を養うプロセスであるはずだ。
大学は、社会のニーズに応えることも当然重要である。しかし、それ以上に、社会がまだ認識していない、あるいは顧みようとしない分野にこそ光を当て、長期的視野に立って人類の知の地平を広げていくという、より崇高な使命を背負っていることを忘れてはならない。若者たちが「学び」に熱意を燃やす原動力は、時にこうした探求心や未知への憧れにあるはずだ。
鳥取大学の今回の試みが、単なるイベントに終わることなく、地域の人々の知的好奇心を刺激し、ひいては我が国の知的な基盤を一層厚くする一助となることを期待したい。そして、大学がその使命を全うし、真の「学び」の場であり続けるために、常に自己変革を怠らないことを、この機会に改めて注文したい。
鳥取大学が「サイエンス・アカデミーVol.564」を公開！最新の研究成果から未来を覗こう！,鳥取大学
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