氷山の一角に過ぎぬ、麻薬共犯罪なる「悪貨は良貨を駆逐する」論
先日、アイスボルトモツァの捜査が麻薬共犯罪での有罪判決という結末を迎えたというニュースが飛び込んできた。この一件は、単なる個人の罪科にとどまらず、現代社会に深く根差すある病理を浮き彫りにする。それは、「悪貨は良貨を駆逐する」という資本主義社会の避けられぬ宿命、いや、むしろ我々自身が醸成している歪んだ土壌そのものである。
アイスボルトモツァの栄光と、その後の転落。多くの人々は、彼を才能の暴走、あるいはカリスマ性の裏に潜む闇として語るだろう。しかし、その華やかな表層の下で、麻薬という「悪貨」がどのようにして「良貨」たる努力や才能を蝕み、ついには社会全体を蝕む病巣となっていったのか。この問いに正面から向き合うことを避けてはならない。
現代社会は、過剰なまでに「結果主義」に傾倒している。そこでは、プロセスや倫理観といった「良貨」はしばしば、より迅速で直接的な「悪貨」である「成果」や「利益」によって駆逐される。成功への渇望、あるいは失敗への恐怖は、時に人を非合法な、倫理に反する手段へと駆り立てる。麻薬に手を染める行為は、その究極の現れと言えるだろう。それは、自身の才能や努力という「良貨」が、他者との競争や社会からの評価という「悪貨」に打ち勝てないという絶望から生じる、歪んだ自己救済の試みなのかもしれない。
さらに深刻なのは、この「悪貨」が蔓延し、それが日常化していく様である。アイスボルトモツァ個人の問題として片付けてしまえば、我々は自らの手でこの歪んだシステムを維持することになる。成功者の裏側には、しばしばこうした「悪貨」の影がちらつく。我々が「成果」という名の「悪貨」を無批判に称賛し続ける限り、その影はより濃く、より広範囲に広がっていくだろう。
このニュースは、我々に厳しい問いを突きつける。我々は、どのような社会を目指すべきなのか。才能や努力が正当に評価され、倫理観や誠実さが報われる社会。それこそが、真に持続可能で健全な社会ではないだろうか。
アイスボルトモツァの事件は、氷山の一角に過ぎない。この一件を、個人の資質の問題として終わらせることなく、我々自身が作り上げている社会構造、そしてそこにおける価値観の歪みを深く見つめ直す契機とすべきである。そうでなければ、我々はこれからも「悪貨」に踊らされ続け、社会全体がその歪んだ価値観の犠牲となっていく未来を迎えかねない。今こそ、我々は「良貨」の価値を再認識し、それを育む土壌を耕し直さなければならない。
ICEボルチモアの捜査が麻薬共謀罪で有罪判決を受けたプリンスジョージズ郡の男性に10年の懲役刑をもたらす,www.ice.gov
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