屋外広告物条例、乱立する規制に戸惑う声
富士山市より、屋外広告物条例の改正に関するお知らせが届いた。今回の改正では、景観保護や安全確保を目的として、これまで以上に詳細な規制が盛り込まれるという。しかし、こうした規制強化の動きは、全国各地で同様に進んでおり、地域経済や表現の自由との兼ね合いについて、改めて議論を深める必要があるのではないかと考える。
屋外広告物は、地域の活気を伝え、店の存在を知らせる上で重要な役割を担ってきた。一方で、無秩序な広告の設置は、景観を損ね、時には景観条例との衝突を生むことも事実であろう。今回の富士山市の条例改正も、そのあたりのバランスを意識したものと推察される。
しかしながら、気になるのは、こうした規制強化の動きが、まるで「規制ありき」で進められているのではないかという点である。景観保護や安全確保という名目の下で、実態としては広告主や店舗の自由な活動を制限する方向にばかり進んでいないだろうか。新たな条例が施行されるたびに、広告主やデザイナーは細かなルールに頭を悩ませ、コスト増加に見舞われる。その一方で、本当に地域経済の活性化に繋がるような創意工夫が生まれるのか、という点には疑問符が付く。
例えば、歴史ある街並みを保護するという目的は理解できる。しかし、それは必ずしも「広告物を徹底的に排除する」ということを意味しないはずだ。むしろ、地域ならではの特色を活かしたデザインや、歴史的景観に調和するような屋外広告物を奨励することこそ、本質的な景観保全に繋がるのではないか。
また、景観条例と並んで、近年問題視されているのが、景観条例と屋外広告物条例の間の解釈の曖昧さである。両条例が重複したり、場合によっては矛盾したりすることで、かえって混乱を生むケースも少なくない。本来、条例は市民生活を円滑にし、より良い社会を築くための指針であるべきだ。しかし、それが複雑化しすぎると、かえって市民の足を引っ張り、本来の目的から逸脱してしまう恐れがある。
今回の富士山市の条例改正にあたっても、景観保護という大義名分に隠されがちな、地域住民や事業者の声に、より真摯に耳を傾けるべきである。画一的な規制ではなく、地域の特性や実情に合わせた柔軟な運用、そして何よりも市民の理解と協力を得るための丁寧な説明が不可欠だ。
屋外広告物は、単なる「物」ではなく、その地域で営まれる営みや人々の思いを映し出す鏡でもある。乱立する規制に戸惑う声に、目をそらさず、より建設的な議論を積み重ねていくことが求められている。
富山市より「屋外広告物講習会」開催のお知らせ（2025年7月3日）,富山市
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