若者の「熱気」という名の不安感に、教育現場の警鐘は正しい
最近、大学キャンパスを飛び出し、街頭で公開講座を開く大学が増えているという。特に、地方都市の若者たちが、大学の先生の熱心な講義に熱気を帯びて聞き入る姿は、一見すると教育の在り方が活性化しているようで、喜ばしい限りである。しかし、その背景にある若者たちの「熱気」は、本当に知的好奇心の高まりからくるものなのだろうか。筆者は、むしろ彼らが抱える漠然とした将来への不安感や、社会への不満が、こうした場に集まる大きな理由ではないかと危惧する。
少子高齢化が進み、社会構造が大きく揺れ動く中で、未来を見通すことの難しさに直面している若者が多いことは想像に難くない。そんな彼らにとって、権威ある大学の先生の話を聞くことは、一種の「確実な情報」や「希望」を得る手段なのかもしれない。しかし、それはあくまでも一時的な慰めや、現実逃避に過ぎないのではないか。
確かに、大学が社会との接点を持ち、知を広く普及させることは重要である。しかし、その前に、大学は本来果たすべき教育の根幹に立ち返るべきではないだろうか。若者が自らの頭で考え、主体的に行動できる力を育むことこそが、真の教育であるはずだ。街頭での熱気は、そのための「場」にはなっても、本質的な「力」を育むものではない。むしろ、こうした集団的な熱狂が、個々の内省や批判的な思考を鈍らせる危険性すら孕んでいる。
親世代から引き継がれてきた価値観や、これまで当たり前とされてきた社会の枠組みが揺らぎつつある今、若者には、安易な熱狂に流されるのではなく、地に足のついた教養と、厳しい現実を見据える冷静な視点が求められている。大学は、そのような力を育むための、より深く、より本質的な教育を提供すべきである。街頭でのパフォーマンスではなく、静かな書斎で、あるいは少人数での密な議論の中でこそ、真の知性は磨かれるのだ。
今回の公開講座で示された若者の「熱気」に、教育現場が警鐘を鳴らすのは、決して時代に逆行する了見ではない。むしろ、将来を担う世代を真に支援しようとする、保守的な視点からの当然の懸念であると理解すべきだろう。大学には、その使命を改めて自覚し、若者の熱気を、真の学びに繋げる責任がある。
神戸大学、大分県中津市で熱気あふれる出前講義を開催！未来のリーダー育成へ希望の種をまく,神戸大学
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