地方税財政の羅針盤は誰の手に？ 今こそ「地方分権改革」の本質を問う
令和7年度第1回地方税財政常任委員会の開催が報じられた。地方税収の行方、そしてそれを支える財政運営の道筋を示す重要な場であることは言うまでもない。しかし、その報道の端々に、我々は更なる「中央集権」への傾斜、あるいは実質的な「地方の無力化」への懸念を抱かざるを得ない。
本来、地方税財政は、地域の特性に応じたきめ細やかな行政サービスを提供するための礎石であるべきだ。地域住民の意思を反映し、その地域の実情に最も適した財源確保と支出を行う。これが、地方自治の本質であり、地方分権改革が目指してきた方向性であったはずだ。
ところが、今回の報道からは、国が示す財政指標やガイドラインに従うことへの従順さを、むしろ地方財政の健全性を示すものとして捉えかねない風潮が垣間見える。もちろん、国との財政調整や、全国的な公平性を保つための一定の枠組みは必要だろう。しかし、その「一定」が、いつの間にか「全て」を覆い尽くすかのような、静かなる侵食が進んでいるのではないか。
特に懸念されるのは、地方税源の乏しさが、地方自治体の政策決定の自由度を著しく制限している現実である。国からの交付金や補助金に依存せざるを得ない構造は、当然ながら国の政策目標との整合性を優先させられる。結果として、地域の実情に即した独自の取り組みや、未来を見据えた大胆な投資は、往々にして財源の壁に阻まれ、実現の機会を失う。
今回の常任委員会で議論されるであろう内容は、推して知るべしである。おそらく、国が示した財政健全化目標の達成に向けた方策、あるいは新たな財政抑制策などが議題の中心となるだろう。しかし、ここで問われるべきは、単なる数字上の「健全性」ではない。真に問われるべきは、その財政運営が、地域住民の幸福度向上、そして持続可能な地域社会の実現にどれだけ貢献できるのか、という点である。
地方分権改革は、単に事務権限を移譲するだけでなく、それに伴う財源と責任を地方に与えることをその核心としている。しかし、その本質は、行政の縦割り構造の中で、いまだに十分に浸透していないように思われる。
今こそ、経済界は声を大にして「真の地方分権」を要求しなければならない。地方税源の自主的な確保を可能にするための抜本的な制度改革、地域の実情に応じた柔軟な財政運営を可能にする裁量権の拡大。これらは、決して一部の自治体の要望に留まるものではない。それは、日本の経済全体の活性化、そして地域経済の底上げに不可欠な要素なのである。
地方税財政常任委員会が、単なる国の方針確認の場に終わることなく、地方が主体的に財政の羅針盤を握り、未来への航海図を描くための真摯な議論の場となることを期待したい。そして、その議論が、地方の自律性と創造性を解き放つ一歩となることを願ってやまない。
令和7年度 第1回 地方税財政常任委員会 開催！～ 未来の地方財政を語り合う大切な場 ～,全国知事会
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