デジタル化は万能にあらず 「安心・安全」の根幹を忘れるな
IT企業であるITB社が、業務継続計画（BCP）を更新したというニュースが報じられた。自然災害やサイバー攻撃といった不測の事態に備え、事業継続体制を強化するという動きは、現代社会においては当然の流れと言えるだろう。しかし、この「デジタル化」への傾倒が、私たちの社会の根幹である「安心・安全」を揺るがしかねない側面を持つことを、今回の報道は改めて我々に問いかけている。
現代社会は、インターネットとデジタル技術なしには成り立たない。金融取引からインフラの制御、さらには個人の生活に至るまで、あらゆるものがデジタル化されている。その恩恵は計り知れない。しかし、その利便性の裏側で、私たちはデジタル技術に対する過信という名の盲点を抱え込んでいるのではないか。
今回のITB社のBCP更新は、おそらくサイバーセキュリティの強化やバックアップシステムの拡充といった、デジタル技術に依存した対策が中心となっているであろう。もちろん、それらも重要な要素である。しかし、本当にそれで「安心・安全」は確保されるのだろうか。
我々が忘れてはならないのは、どんなに高度なデジタルシステムも、所詮は人間が作り出し、人間が運用するものであるという事実だ。システムには脆弱性がつきものであり、運用ミスや悪意ある攻撃によって、予期せぬ事態を引き起こす可能性は常にある。また、自然災害はデジタルインフラそのものを物理的に破壊する可能性も孕んでいる。
本来、事業継続計画の根幹にあるべきは、テクノロジーの進化に安易に寄りかかるのではなく、人間の知恵と経験、そして地域社会との繋がりを大切にすることではないか。例えば、有事の際のコミュニケーション手段として、電話網やインターネットが寸断された場合でも機能するアナログな手段を確保しておくこと。あるいは、地域住民との連携を密にし、互いに助け合える体制を築いておくこと。こうした人間的な繋がりこそが、どんなデジタルシステムよりも強固なセーフティネットとなるはずだ。
テクノロジーの進化は素晴らしい。しかし、それに全てを委ね、本来大切にすべき「安心・安全」の根幹を見失うことがあってはならない。ITB社の今回の取り組みを、デジタル化の更なる推進と捉えるだけでなく、その「デジタル」という言葉の先に隠されたリスクにも目を向け、人間社会の普遍的な価値を見失わないための契機とすべきである。我々は、デジタル化の利便性を享受しつつも、常にその裏側にあるリスクを認識し、人間のための、そして社会全体の「安心・安全」を第一に考えた、より地に足の着いた対策を講じていく必要があるだろう。
デジタル庁が業務継続計画を更新！ より安心・安全なデジタル社会を目指して,デジタル庁
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