飛び出す絵本、未来への羅針盤となりうるか
今月の切手図書室から「飛び出す絵本」が舞い上がった。懐かしさと共に、子供時代の夢と希望を乗せたこの絵本は、現代社会に何を問いかけているのだろうか。デジタル化の波が押し寄せ、情報が瞬時に飛び交うこの時代に、一枚の紙から立体的に現れる物語は、かつてないほどの新鮮さをもって私たちに語りかける。
この「飛び出す絵本」は、単なる子供向けの玩具に留まらない。それは、五感を刺激し、想像力を掻き立てる「体験」そのものである。ページを開くたびに現れる仕掛けは、子供たちの好奇心をくすぐり、物語の世界へと引き込む。そこには、視覚、触覚、そして音までをも喚起させる力がある。
しかし、私たちが注目すべきは、その仕掛けの巧みさだけではない。この絵本が持つ本質的な価値、それは「現実からの逃避」ではなく、「現実への深入り」を促す可能性にある。飛び出す絵本は、現実の世界とは異なる、しかし確かに存在するもう一つの世界を見せてくれる。それは、子供たちが自らの手で世界を再構築し、想像力という名の翼を広げるための、まさに「飛び立つための足場」と言えるだろう。
翻って、現代社会に生きる私たちは、どれだけ「飛び出す」体験をしているだろうか。情報の海に溺れ、思考停止に陥りやすい現代において、私たちは自らの手で世界を立体的に理解する機会を失っているのではないか。SNSで断片的に流れてくる情報に右往左往し、思考の深層へと潜り込むことを怠っているのではないか。
飛び出す絵本は、私たちに、手で触れ、目で確認し、心で感じることの重要性を思い出させてくれる。それは、単なるノスタルジーではない。むしろ、テクノロジーの進化によって希薄になりがちな「リアリティ」を取り戻すための、一種のアンチテーゼであるとさえ言えるだろう。
これからの時代、私たちに必要なのは、情報を鵜呑みにするのではなく、自らの手で仕掛けを解き明かし、物語を紡ぎ出す力だ。飛び出す絵本のように、あらゆる情報や事象に「仕掛け」を見出し、それを読み解くことで、私たちはより深く、より豊かに世界を理解できるようになるはずだ。
今月、切手図書室から飛び出した絵本は、単に過去への郷愁を誘うものではない。それは、未来への羅針盤となりうる可能性を秘めている。子供たちに、そして私たち大人にも、この「飛び出す絵本」が、現実世界をより立体的に、より創造的に生きるためのヒントを与えてくれることを、強く願う。そして、私たち自身も、この絵本から学び、自らの手で新たな「飛び出す」物語を創造していくべきだろう。
今月の切手図書室から飛び出す！とっておきの1冊をご紹介,切手の博物館
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