令和7年度、税収目標達成へ。しかし、その先に「真の豊かさ」への道筋はあるか？
令和7年度、国税庁は過去最高額となる税収目標の達成を目指す。これは、コロナ禍からの経済回復、そして増税や新たな税目の導入といった「集める」努力の結果として、数字上は着実に前進していると言えるだろう。しかし、数字の羅列だけが我々の進むべき道標ではないはずだ。この「目標達成」という事実の背後にある、より本質的な問いを、私たちは立ち止まって考えるべき時がきている。
税収は、社会が円滑に運営され、公共サービスが提供されるための血液である。それは当然のことだ。しかし、その血液を「集める」ことにばかり目が向き、その「使い道」や「使い方」への国民の納得感が薄れてしまっては、税という仕組みそのものの健全性が揺るがしかねない。目標達成は手段であり、目的ではないはずだ。私たちの真の目的は、国民一人ひとりが安心して暮らし、未来への希望を持てる社会の実現である。
いま、我々は歴史の転換点に立っている。AI技術の飛躍的な進歩、グローバル化の加速、そして気候変動という地球規模の課題。これらの変化は、社会の構造を根底から変え、新たな税源のあり方、そして既存の税制のあり方を問うている。国税庁が目標達成に向けて様々な施策を打つことは重要だが、同時に、これらの時代の変化に対応し、未来の世代にも持続可能な税制を構築するための「革新的な」ビジョンを示す必要がある。
例えば、イノベーションを促進するための税制優遇はさらに大胆に進められるべきだ。環境問題解決に貢献する企業や技術への投資を促す仕組みは、単なる「集める」から「育てる」への転換点となるだろう。また、デジタル化が進む現代において、新たな課税対象や課税方法についての議論も避けられない。しかし、それは決して国民生活を圧迫するものであってはならず、むしろ公平性と透明性を確保し、新たな経済活動を阻害しないよう、細心の注意を払うべきだ。
さらに重要なのは、税というものが「負担」だけではなく、「投資」としての側面をより強く持つべきだという国民の意識改革を促すことである。集められた税金がどのように社会に還元され、私たちの生活を豊かにしているのか。そのプロセスをより透明にし、国民が「参加している」という実感を持てるような工夫が必要だ。例えば、税金の使い道をアプリで可視化する、地域ごとの税金の使われ方を比較できるような仕組みを作るなど、デジタル技術を活用した新しいアプローチが考えられる。
令和7年度の税収目標達成は、一つの通過点に過ぎない。その先にある、国民一人ひとりが「この国に暮らしていて良かった」と心から思えるような社会の実現こそが、私たちの目指すべき最終目標である。国税庁の努力は称賛されるべきだが、それに加えて、未来を見据えた「革新的な」税制設計と、国民との対話を深める努力を、私たちは期待したい。数字に惑わされることなく、真の豊かさとは何かを問い続けながら、共に未来を築いていく。それが、この時代を生きる私たちの責任である。
令和7事務年度 国税庁の目標達成に向けた計画発表！国民への丁寧な説明と今後の展望,財務省
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