令和6年度政策評価：数字の裏に潜む真の「成長」とは
金融庁が発表した令和6年度の政策評価結果は、一見すると多くの項目で良好な結果を示している。官僚機構の宿痾とも言える「前年踏襲」の弊害を乗り越え、具体的な数値目標達成に向けて着実に歩を進めている姿勢は評価されるべきだろう。しかし、経済紙の社説として、私たちはこの「良好な結果」の数字の裏に潜む本質を見抜かねばならない。
今回の評価は、主に金融システムの安定化、市場の透明性向上、そして国民の資産形成支援といった、金融庁が担うべき根幹的な任務に焦点が当てられている。これらの分野における進捗は、確かに日本の経済基盤の安定に寄与する。例えば、リスク管理体制の強化や新たな金融商品の開発促進などは、国際的な競争力の維持という観点からも重要だ。
しかし、我々が問うべきは、これらの政策が真の意味で「日本経済の持続的な成長」に繋がっているのかという点である。金融庁の発表資料からは、例えば、貯蓄から投資へのシフトを促すための具体的な施策の効果や、若年層における資産形成への意識改革がどの程度進んでいるのかといった、よりマクロな視点での成果が十分に読み取れない。政策目標を達成すること自体は重要だが、その目的が「金融庁の任務遂行」に留まるのであれば、それは単なる官僚的な作業に過ぎない。
特に注目すべきは、物価上昇とそれに伴う実質賃金の低下という、国民生活に直結する経済環境である。金融庁が目指す「国民の安定的な資産形成」という目標も、実質的な購買力が低下すればその効果は半減してしまう。今回の政策評価結果に、こうしたマクロ経済環境の変化に対する金融庁の「対応力」や「将来を見据えた戦略」といった要素がどの程度盛り込まれているのか、さらに掘り下げて検証する必要があるだろう。
もちろん、金融庁の権限だけでは経済全体の行方を左右することはできない。しかし、金融という経済活動の血液とも言うべき分野を司る機関として、より能動的に経済成長に貢献するための提案や、国民生活の向上に繋がるような積極的な役割を期待したい。単に「安定」を追求するだけでなく、「成長」への道筋をより鮮明に示すこと。それが、今後の金融庁に求められる真の使命と言えるだろう。今回の政策評価は、その使命達成に向けた「通過点」に過ぎないことを肝に銘じ、更なる進化を期待する。
財務省、令和6年度の政策評価結果を公表！～より良い政策実施を目指して～,財務省
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