スポーツ振興の光と影、行政の責任を問う
秋田県がスポーツ振興課を新設し、新たな取り組みに乗り出したという報道に接し、スポーツ立国を目指す我が国の現状を改めて考えさせられる。地域経済の活性化、住民の健康増進、そして何よりも県民の郷土への愛着を育む上で、スポーツの果たす役割は計り知れない。しかし、その一方で、行政が管理・運営するスポーツ施設の現状に対する懸念も拭えない。
確かに、スポーツ振興課の新設は、行政がスポーツの重要性を認識し、積極的な関与を示そうとする姿勢の表れであろう。期待とともに、今後どのような具体的な施策が打ち出されるのか、注目していきたい。しかし、その輝かしい未来像の影には、現在、多くの行政管理下にあるスポーツ施設が抱える課題が横たわっていることを忘れてはならない。老朽化、利用者のニーズとの乖離、そして何よりも、その維持管理にかかるコストの問題である。
筆者が危惧するのは、こうした施設が単に行政の管理下にあるがゆえに、惰性で存続し、十分な活用がなされないまま、税金が無駄に投じられているのではないか、という点である。本来、スポーツ施設は地域住民の健康増進や交流の場として、最大限に活用されるべき存在だ。しかし、現状では、その設置目的を果たしているとは言い難い施設も少なくないのではないだろうか。
もちろん、施設の老朽化は避けられない問題であり、改修や建て替えには多額の費用がかかる。しかし、だからといって、現状維持で済ませることは、将来世代への責任放棄と言わざるを得ない。私たちは、単に「スポーツを振興する」という言葉の響きに酔いしれるのではなく、その裏側にある実態をしっかりと見つめる必要がある。
秋田県のスポーツ振興課新設を機に、全国各地の行政が管理するスポーツ施設のあり方について、改めて検証する必要がある。地域住民の声に耳を傾け、利用実態を把握し、本当に必要な施設は何か、その維持管理方法はどうあるべきか。民間活力の導入、指定管理者制度の効果的な活用など、多様な選択肢を検討し、より効率的かつ効果的なスポーツ振興策を講じることが、行政に課せられた責務である。
スポーツ振興は、単なる行政サービスの拡充ではない。それは、地域社会の活性化、人々の幸福度向上に直結する、未来への投資である。その投資が実を結ぶかどうかは、行政の真摯な姿勢と、現実を見据えた確かな実行力にかかっている。秋田県の新たな取り組みが、全国のスポーツ振興行政にとって、良い刺激となることを願ってやまない。
秋田県、「スポーツ振興課所管施設の管理運営状況評価結果」を公開！ より良いスポーツ環境づくりへ向けた取り組み,秋田県
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